研究課題
脊椎動物は5億年以上の進化を経て、陸海空と様々な環境に進出してきた。しかしそれでもなお、ボディプランと称される共通の形態要素を保っている。この形態の保守性の由来は、「発生砂時計モデル」では生物種間で類似する発生中期(咽頭胚期)の発生システムの進化的な変更の少なさだと予測している。発生中期の進化的保存性を生むメカニズムとして、本研究の仮説では「咽頭胚期では表現型の個体間差が生じづらく、進化速度が遅い。このために進化的に保存されている」とした。今年度は【ゆらぎによる遺伝子発現の個体間差】【小進化レベルにおける遺伝子発現の個体間差】を計測するためのプロファイル整備・サポートデータとなるデータ群の整備を行い、さらに当初の計画では3年目に行う予定であった主要な解析に着手した。さらには遺伝子ごとに解像度を高めた解析も開始している。具体的には、メダカ近交系でsingle embryo RNA-Seqを行い、およそ150個体分のシーケンスデータを入手した。さらにメダカ野生集団からも2つの集団からそれぞれ、合計24個体のシーケンスデータを入手した。いずれもマップ率約90%、マップ後データの最低depth 20M以上であり、クオリティは十分である。さらに基礎生物学研究所からの支援をうけ、近交系の1個体由来のリシーケンスデータ複数個体分、野生集団のリシーケンスデータ各集団分を整備、またメダカ成魚由来の器官由来のトランスクリプトームデータを整備した。以上より、非常に貴重な基盤データを入手したと考える。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画で予定していた、必要な遺伝子発現プロファイルの整備は完遂した。今年度はさらに、サポートデータとなるメダカ各系統のリシーケンスデータ、メダカ成魚の器官ごとの発現データ群など大量のデータを取得した。3年目に計画していた解析にもすでに着手しており、当初の予定以上の精度での研究が期待される。
解析用のパイプラインもパッケージ化し整備した為、マウスでの同様の解析や、メダカデータにおいてよりサンプリングする発生段階を加えた解析を早急に行うつもりである。2年次は遺伝子発現データを扱う解析を主に行っていたので、ゲノムデータを扱う方法論、統計解析的方法を身につける。
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