研究課題/領域番号 |
17J06240
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松本 明宏 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | エキソソーム / 癌ワクチン / CpG / ドラッグデリバリー |
研究実績の概要 |
細胞から分泌される粒子径100 nm程度の膜小胞であるエキソソームは核酸やタンパク質の内因性の細胞間輸送キャリアであり、これを利用した癌抗原の樹状細胞への送達法の開発が行われ、特に樹状細胞から産生されるエキソソームを利用した癌ワクチン療法の開発についての研究が盛んに行われている。本研究では、体内動態制御型樹状細胞由来エキソソームによる癌ワクチン療法の開発を目的に、マウス樹状細胞株DC2.4細胞とマウス骨髄樹状細胞(BMDC)から回収したエキソソームを用いて一連の検討を行った。まず、モデル抗原の卵白アルブミン(OVA)を添加した樹状細胞からエキソソームを回収し、OVAが搭載されていることをウェスタンブロット法により確認した。ウェスタンブロット法と透過型電子顕微鏡により、超遠心で回収したサンプル中にエキソソームマーカーであるAlixとHSP70が発現していること、また100nm前後の粒子が存在することを確認した。OVA搭載樹状細胞由来エキソソームを利用してOVA特異的免疫が誘導されるかを評価したが、免疫反応が十分に誘導されないことが示された。この結果は、エキソソームの細胞内取り込み効率が低いことが原因ではないかと考えられたので、次にエキソソームの細胞内取り込みの改善を目的にエキソソームのサイズ制御を試みた。DNA相互作用を利用してCpG-DNA修飾エキソソーム粒子同士を連結した結果、マイクロメーターサイズの会合体の調製が可能であった。このエキソソーム会合体は対照群と比較して樹状細胞への取り込みが有意に上昇し、樹状細胞を効率的に活性化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OVA搭載樹状細胞由来エキソソームが十分な抗原特異的免疫応答を誘導できなかったため、研究計画の変更を行った。すなわち、エキソソームのサイズ制御を行うことで免疫応答を制御できないか仮説を立て、検討を行った。エキソソームの会合体を作製することで当初の目的を達成する見込みがある。
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今後の研究の推進方策 |
DC2.4細胞がT細胞に抗原提示するためには、DC2.4細胞へ効率的に樹状細胞由来エキソソームを送達する必要がある。一方、樹状細胞の取り込み効率は粒子径を制御することが重要であることが知られている。そこで次に樹状細胞への取り込みを向上することを目的にエキソソーム同士を連結した会合体を調製した。 報告者の所属する研究室ではストレプトアビジン(Streptavidin, SAV)とエキソソーム移行性タンパク質Lactadherin(LA)との融合タンパク質(SAV-LA)を開発した。SAV-LA標識マウスメラノーマB16BL6細胞由来エキソソームにビオチン標識CpG-DNAを混合することでCpG-DNA修飾エキソソームを調製した。次にCpG-DNAに相補的な一本鎖DNAを添加することでDNA相補的相互作用に基づいてCpG-DNA修飾エキソソーム会合体を調製した。透過型電子顕微鏡で観察すると、マイクロサイズの会合体の形成が確認された。次にエキソソームを蛍光標識してCpG-DNA修飾エキソソーム会合体のDC2.4細胞への細胞内取り込みを評価した。その結果、会合体化することによりエキソソームのDC2.4細胞への取り込みが有意に向上した。同時に会合体にすることでアジュバントであるCpG-DNAも同時に取り込みが向上していたことから、CpG-DNA修飾エキソソーム会合体は対照群と比較して効率的にDC2.4細胞を活性化することを確認した。 今後は、会合体化にした際の抗原特異的免疫誘導能をin vitro, in vivoで評価予定である。
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