最終年度にあたる本年度は、前年度に続く国際環境法の諸原則の非国際環境法レジームへの内在化現象の分析を完成させ、その現象説明および示唆を照らし出すための理論部分を大きく拡充することで、研究全体のまとめとした。 まず、国際環境法の諸原則が人権条約上の義務として包摂される現象を手がかりとして、一般的に妥当する国際環境法の諸原則とは、先行研究が想定していたような、普遍的に妥当する単一の国際法規範として妥当するのではなく、多元的かつ重層的な複数の法規範・法規範に遍在する規範として、即ちグローバル法として妥当する、という仮説を、実際の現象の再分析と併せることにより、部分的ではあるものの、一定の実証的基盤を有する法理として提示した。また、グローバル法理論を比較法学における機能主義に基礎づけることにより、グローバル法としての国際環境法の諸原則理解が、今後の国際法学における国際環境法の諸原則の研究の発展のあり方に与える示唆を引き出した。この点について、比較法学者による国際環境法の諸原則研究の書評を研究会で報告し、以上の取り組みの基礎とした。 また、国際環境法の諸原則の法的地位として言及されてきた、慣習国際法およびソフトローと、グローバル法との位置関係を把握するために、これらを国際環境法の諸原則の一般的妥当を説明する法理として同列に位置づけ、説明的正当性と規範的正当性の両方の観点から、それぞれの法理を同一基準に照らして評価した。この作業により、国際環境法の諸原則の一般的妥当を示す法理の段階的発展を描き出すとともに、グローバル法理論が、同じく国際環境法の諸原則の一般的妥当を示すことを目的としてきた既存の法理である慣習国際法やソフトローに比して、いかなる利点を有するかについて明らかにした。この成果は、国際ワークショップで概要を報告した。 今後は、以上の内容を拡充させつつ公表の準備を進める。
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