生命のホモキラリティを解明することは、生命誕生について検証する鍵を握るとされており、学術的に極めて重要である。そこで前生物的アミノ酸合成反応とされるストレッカー型反応において中間体アミノニトリルおよびシアノヒドリンに着目した自己複製型ストレッカー反応について明らかにした。 α-1-ナフチルグリシンニトリルを加水分解して得られるアミノ酸・1-ナフチルグリシンを不斉源とすることで、ストレッカー反応におけるアミノ酸の不斉自己複製を達成した。アミノ酸存在下においてストレッカー反応を進行させ、温度サイクルによる不斉増幅を行った結果、L-アミノ酸存在下の実験からはL-アミノニトリルが、D-アミノ酸を用いた実験からはD-アミノニトリルが得られ、不斉誘起されるアミノニトリルの絶対配置に相関性が確認できた。得られたアミノニトリルを加水分解すると、不斉源に用いたアミノ酸と絶対配置を含めて同一構造のアミノ酸が得られたことから、ストレッカー反応におけるアミノ酸の不斉自己複製を達成した。 ストレッカー反応において、アンモニア(アミン)が欠如した場合、ヒドロキシ酸が生成することが知られている。そこで、アミノ酸の実験と同様にしてヒドロキシ酸の不斉自己複製について検討を行なった。不斉源とするヒドロキシ酸存在下において反応を進行させ、中間体シアノヒドリンを合成し、温度サイクルによって鏡像体過剰率を増幅させることで、その絶対配置を決定した。その結果、(S)-ヒドロキシ酸を不斉源に用いた実験では(S)-シアノヒドリンが、(R)-ヒドロキシ酸を不斉源とした場合には(R)-シアノヒドリンが不斉誘起されることを確認した。得られたシアノヒドリンを加水分解すると、絶対配置を含めて同一構造のヒドロキシ酸が得られる。即ち、ストレッカー型反応におけるヒドロキシ酸の不斉自己複製を達成した。
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