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2017 年度 実績報告書

非モデル鱗翅目昆虫における性決定・性染色体・遺伝子量補償の進化過程の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17J06249
研究機関東京大学

研究代表者

李 允求  東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2017-04-26 – 2019-03-31
キーワードゲノム編集 / 性決定 / 鱗翅目昆虫 / エリサン
研究実績の概要

<エリサンにおけるゲノム編集について>
非モデル昆虫であるエリサンにおいて,TALENを用いた遺伝子ノックアウトに世界で初めて成功した. その過程で,カイコでマーカーとして用いられているBLOS2のエリサンホモログ(SrBLOS2)が同じくマーカーとして利用できること,およびエリサンの皮膚の色がカイコと同じように尿酸の蓄積によるものであることを明らかにした. すなわち, BLOS2をノックアウトしたエリサンにおいては皮膚が透明になり, 真皮細胞層中の顆粒構造が消失するのである. この成果は, 尿酸の代謝系の少なくとも一部が, エリサンとカイコの間で進化的に保存されていることを示唆している.

<エリサンの性決定機構について>
カイコにおいてオス化を担うMascのエリサンホモログ(SrMasc)はオス化能を持たず, その他の遺伝子(発表前のため, 名を伏せる)がオス化能を持つことを明らかにした. この遺伝子のノックアウトは, オス個体において部分的な性転換を引き起こす. この結果は, チョウ目昆虫においても性決定遺伝子が多様化していることを示す初めての結果であり, 当該分野において大きなインパクトがある成果である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

エリサンは, ヤママユガ科に属する大型の昆虫である. エリサンは非モデル昆虫であるため, ゲノム編集技術の適用報告も存在しなかった. そのため, エリサンに最適なゲノム編集手法を開発する必要に迫られた. 試行錯誤のすえ, エリサンにおいて, TALENを用いた遺伝子ノックアウトに世界で初めて成功した. また, その過程で, カイコでマーカーとして用いられているBLOS2のエリサンホモログ(SrBLOS2)が同じくマーカーとして利用できることを明らかにした. また, この結果に付随して, エリサン幼虫の白い体色が, カイコと同じように真皮細胞層における尿酸顆粒の蓄積によるものであることも併せて明らかにすることができた.
上で述べたゲノム編集技術を活用して, エリサンの性決定遺伝子候補(発表前のデータのため, 遺伝子名は伏す)のノックアウトを試み, これに成功した. その結果, 部分的な性転換がみとめられ, 候補遺伝子が性決定遺伝子であることを
証明することができた. また, この遺伝子は, カイコの性決定遺伝子BmMascとは異なる遺伝子であり, 鱗翅目昆虫においても性決定機構が多様化していることを示唆する史上初の結果となった.

今後の研究の推進方策

<ゲノム編集について>
TALENによるゲノム編集が成功したとはいえ, そのGermline transmission rate(GTR)は極めて低く, 約3%である. TALENを用いた遺伝子ノックインを成功させるには, GTRをより向上させる必要がある. 具体的には, 現行のTALEN作成に用いているキット(addgene, Golden Gate TALEN and TAL Effector Kit 2.0)をその後継キット(Platinum Gate TALEN Kit)に変更する. ただし, 鱗翅目昆虫用にカスタマイズされた最終ベクターpBlue-TALとPlatinum Gate kitに互換性がないため, Platinum Gate Kit用にpBlue-TALを改変する必要がある. また, TALENは作成に時間がかかるため, より簡便の遺伝子ノックアウトを行うため, CRISPR/Cas9によるゲノム編集系の立ち上げを試みる.
<エリサンの性決定機構について>
今年までに遺伝子ノックアウトによる機能証明を済ませたので, 本年度は, 遺伝子ノックインによるレスキュー実験を予定している.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] エリサンSamia riciniにおけるゲノム編集技術の確立2018

    • 著者名/発表者名
      李允求・木内隆史・嶋田透・勝間進
    • 学会等名
      日本蚕糸学会
  • [学会発表] エリサンSamia riciniの白い体色は尿酸顆粒の蓄積に起因する2018

    • 著者名/発表者名
      李允求・木内隆史・嶋田透・勝間進
    • 学会等名
      日本応用動物昆虫学会
  • [学会発表] エリサンにおけるゲノム編集の現状(2017年度版)2018

    • 著者名/発表者名
      李允求・木内隆史・勝間進・嶋田透
    • 学会等名
      日本応用動物昆虫学会

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公開日: 2018-12-17  

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