研究課題/領域番号 |
17J06300
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
清水 勇希 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | ヘビークォークスピン対称性 / ペンタクォーク / エキゾチックハドロン / ハドロン分子 |
研究実績の概要 |
平成30年度は「ヘビークォークスピン対称性に基づくペンタクォークのヘビークォークスピン多重項構造」を中心に研究した。2015年にLHCb実験でPcペンタクォークが発見されて以降、2個のヘビークォークを含むペンタクォーク状態について数多くの研究が行われている。しかしそれら先行研究においてヘビークォークを2個含んだことを反映したヘビークォークスピン対称性は考慮されておらず、従来のヘビークォーク1個の理論を用いて解析されてきた。 本研究ではPcペンタクォークが2個のチャームクォークを含むことを反映したヘビークォークスピン対称性に基づく理論を構築し、ヘビークォークスピン多重項構造を導出した。 平成30年5月に軌道角運動量S波の場合の解析結果を論文にまとめ発表した。ここでは全部で一重項が2種類、二重項が1種類、三重項が1種類の、計4種類の多重項が存在することを示した。特に三重項はヘビークォークが1個の場合の系には存在しない構造であり、本研究のように複数のヘビークォークスピンを考慮することで現れる特徴的な多重項であることを指摘した。またパイ中間子交換相互作用を用いて引力ポテンシャルを持つ多重項を調べた結果、スピン3/2の一重項、及びスピン1/2, 3/2, 5/2の三重項が引力を持つことを示した。この構造を用いて発見済みのPcペンタクォークの分類、そして未発見粒子の予言につなげることができると期待される。本結果は10月にハワイで開催された第5回日米物理学会合同核物理分科会などで口頭発表した。 平成31年1月にはP波状態の解析結果を論文にまとめ発表した。この場合は全10種類の多重項が存在することを示し、同様にパイ中間子交換相互作用を用いてどの多重項が引力的であるかを調べた。上述のS波の結果と合わせてペンタクォークに対する理論的なスピン構造への新たなアプローチを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度の研究計画通りに「ヘビークォークスピン対称性に基づくペンタクォークのヘビークォークスピン多重項構造」を明らかにすることができた。またこれらの結果を国内外の研究会、学会などで発表し多くの研究者と議論を行うことができた。 さらにPcペンタクォークについての研究だけでなく、ボトムクォークを含むペンタクォークの研究や、テトラクォークに対するヘビークォークスピン多重項構造の研究など当初の計画以上の研究を行った、あるいは進行中となっている。 以上の理由より平成30年度の研究は当初の計画以上に進展してる。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年3月末にLHCb実験の最新の結果が発表され、Pcペンタクォークについてのデータが更新された。これを受けた今後の研究計画として、共鳴状態を含めた負パリティのペンタクォークの解析を行い、最新の実験結果に合わせたモデルのアップデートを行う必要がある。これまでの研究結果から、現在見つかっているPcペンタクォークより高いエネルギー領域に未発見粒子が存在することが予言される。その質量などの情報を得るためには束縛状態だけでなく共鳴状態まで扱う必要があるため、より精密な数値計算を実行していく。 また現在進行中のテトラクォークに対するヘビークォークスピン多重項の研究も並行して進めていく。テトラクォークはこれまでに複数種類が見つかっており、この研究で得られる多重項構造へ当てはめることで粒子の分類や、そこから予想される未発見粒子の構造を調べられると期待している。
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