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2017 年度 実績報告書

新口動物の中腸領域における機能・形態の分子的背景と進化機序

研究課題

研究課題/領域番号 17J06306
研究機関千葉大学

研究代表者

中山 理  千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2017-04-26 – 2020-03-31
キーワード消化管 / 中腸領域 / 消化機能 / 吸収機能 / 遺伝子発現 / 新口無脊椎動物 / 進化
研究実績の概要

新口動物の消化管の中でも中腸領域には多様な構造・器官が存在し、消化や吸収等の消化管の基本的機能が担われているが、その新口動物の中腸領域の形態と機能の進化について明らかになっているとは言えない。そこで本研究では、新口無脊椎動物である尾索類ホヤや頭索類ナメクジウオを用いて、中腸領域の機能(消化・吸収)とそれを担う形態の分子的背景を解明し、中腸領域の機能・形態の進化機序の理解を目指す。
2017年度は、まず尾索類カタユウレイボヤの中腸領域の機能と形態形成機構を探る目的で、(1)中腸領域における吸収機能関連遺伝子の発現解析、(2)Pdxの中腸領域における形態形成機能の解析を進めた。(1)について、カタユウレイボヤの幼若体と成体を用いて吸収機能関連遺伝子の発現解析を行った。カタユウレイボヤではこれらの遺伝子群が食道、胃、腸で発現し、これまでの先行研究と合わせて考えると、尾索類の胃では消化と吸収の両者が担われ、尾索類の「胃」は脊椎動物の「胃(前腸領域)」よりも「十二指腸(中腸領域)」にその分子的背景が類似している可能性がある。(2)について、まず機能解析を行うための遺伝子導入実験系の立ち上げを行った。その実験系を用いてPdxのプロモーターをGFP遺伝子につないだコンストラクトを導入したところ、GFPの変態後の幼若体の内胚葉性の胃上皮での発現を確認し、今後のPdxの機能解析に利用可能な遺伝子導入実験系を立ち上げることができた。
さらに尾索類の解析に加えて、頭索類ナメクジウオの中腸領域の機能を探る目的で、(3)中腸領域における消化機能関連遺伝子の発現解析を行った。消化機能関連遺伝子である外分泌消化酵素遺伝子群は肝盲嚢と腸の広範な領域で発現し、肝盲嚢における外分泌消化酵素遺伝子の発現は、肝盲嚢が消化に寄与するとの考えを支持するものと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2017年度は尾索類を中心に解析を行い、カタユウレイボヤにおいて吸収機能関連遺伝子群の詳細な発現解析を行うことができ、それらの解析結果について第88回日本動物学会年会において発表した。さらにこの吸収機能関連遺伝子群の発現解析について現在論文の投稿に向けて準備中である。また、カタユウレイボヤのPdxの機能解析については、機能解析のための遺伝子導入実験系を整えつつあり、具体的なPdxの機能解析までには至らなかったものの今後行う予定の遺伝学的実験の基盤を築くことができたと考えている。
当初の計画では、2018年度に行う予定であった頭索類ナメクジウオの遺伝子発現解析について、その一部を2017年度中に行うことができ、頭索類の肝盲嚢を中心とする中腸領域の機能に関して知見を得ることができ、この結果についても第88回日本動物学会年会において発表した。
以上から、Pdxの機能解析については今後本格的に解析を始めるものの、尾索類および頭索類の発現解析については予定通り、もしくは予定以上に順調に進展しており、2017年度の本研究全体としては「おおむね順調に進展している」と判断した。

今後の研究の推進方策

2018年度は、尾索類カタユウレイボヤと頭索類ナメクジウオを用いて、以下のテーマを中心に実験および論文の執筆を進め、頭索類・尾索類・脊椎動物の中腸領域における分子的背景を比較し、脊索動物の中腸領域の機能・形態の進化について考察する予定である。
(1)尾索類カタユウレイボヤ吸収機能関連論文の発表:2017年度において解析したカタユウレイボヤの吸収機能関連遺伝子の発現解析結果について、脊索動物の消化システムの多様化と進化の観点から考察し、論文を国際誌に投稿する。
(2)尾索類カタユウレイボヤPdxの機能解析:カタユウレイボヤにおいてPdxのノックアウト実験および強制発現実験を行う。そして、Pdxがカタユウレイボヤ胃の形態形成に寄与するか、またPdxが消化・吸収機能関連遺伝子の発現に影響を与えるかを解析し、尾索類の中腸領域におけるPdxの機能とその進化的意義を明らかにする。
(3)頭索類ナメクジウオにおける消化管関連遺伝子の発現解析:ナメクジウオにおける消化機能関連遺伝子の発現解析を行う。そして、頭索類消化管の遺伝子発現と形態との比較から頭索類の消化管の機能的・形態的領域性を明らかにする。また、頭索類をはじめとした脊索動物の消化管の進化に関して、周辺状況を整理し、論文の執筆を始める。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Shared hemocyte- and intestine-dominant expression profiles of intelectin genes in ascidian Ciona intestinalis: insight into the evolution of the innate immune system in chordates2017

    • 著者名/発表者名
      Minoru Hayashibe, Satoshi Nakayama, Michio Ogasawara
    • 雑誌名

      Cell and Tissue Research

      巻: 370 ページ: 129-142

    • DOI

      10.1007/s00441-017-2647-3

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Compartmentalized expression patterns of pancreatic- and gastric-related genes in the alimentary canal of the ascidian Ciona intestinalis: evolutionary insights into the functional regionality of the gastrointestinal tract in Olfactores2017

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Nakayama, Michio Ogasawara
    • 雑誌名

      Cell and Tissue Research

      巻: 370 ページ: 113-128

    • DOI

      10.1007/s00441-017-2627-7

    • 査読あり
  • [学会発表] Localization analysis of cionin, cholecystokinin/gastrin ortholog, and its receptor in ascidian, Ciona intestinalis2017

    • 著者名/発表者名
      Toshio Sekiguchi, Shiho Taniguchi, Satoshi Nakayama, Michio Ogasawara, Shuichi Wada, Honoo Satake, Nobuo Suzuki
    • 学会等名
      9th Tunicate International Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] 原索動物における消化・吸収関連遺伝子群の発現と消化管の分子的背景の進化2017

    • 著者名/発表者名
      中山 理, 林部 稔, 小笠原 道生
    • 学会等名
      第88回日本動物学会年会

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公開日: 2018-12-17  

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