本研究課題はシロアリの社会性進化を促したと考えられる不妊兵隊カーストの進化機構の解明を目指すものである。当該年度は本研究課題の最終年度であり、これまで明らかとなった兵隊分化の決定因子であるHR39遺伝子の標的遺伝子の探索を行った。HR39遺伝子のノックダウン個体を用いて行ったRNA-seq解析によってHR39の下流遺伝子の絞り込みを試みた。その結果、ショウジョウバエにおいて翅形成に関わる遺伝子がHR39の下流で兵隊特異的な形態形成を制御することが示された。また、細胞増殖に関わるInR遺伝子の内、シロアリを含むゴキブリ目でのみ獲得されたInR3もHR39の下流で発現制御を受け、兵隊特異的な頭部の巨大化に関わることが示された。以上のことから、幼若ホルモン(JH)の制御化に再配置されたHR39遺伝子が、形態形成や細胞増殖に関わる遺伝子群が制御することにより、シロアリ特異的な兵隊分化を可能にしていることが示唆された。
|