研究課題/領域番号 |
17J06361
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
漆畑 拓弥 岩手大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 慢性低灌流 / 脳卒中 / 血管性認知症 / 病態モデルマウス / フラビン蛍光イメージング / DTI / 2光子レーザー顕微鏡 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、慢性低灌流モデルマウスにおける脳機能障害のメカニズムを明らかにするため、フラビン蛋白蛍光イメージングによる脳酸素代謝の評価、および拡散MRIによる脳神経損傷の評価、2光子顕微鏡によるカルシウムイメージングによる脳神経活動評価の研究を行った。また、これらの手法を使用して慢性低灌流モデルマウスの脳疾患を正確に評価するために、測定条件および解析手法の最適化を行い、脳血流の違いが測定値に影響を及ぼす測定においては、脳血流の影響を除去するための補正法の開発を行った。この研究により、慢性低灌流モデルマウスは片側総計動脈結紮による脳血流低下の直後(~1週間)に神経の異常な過活動を示し、その後1ヵ月後に神経活動量と酸素代謝量の低下や、神経繊維の損傷を引き起こすことが明らかとなった。 慢性低灌流モデルマウスにおける脳酸素代謝を正確に評価するために、フラビン蛋白蛍光イメージングにおける脳血流の影響を除去し、脳酸素代謝変化のみを測定するための補正法の開発を行った。この研究成果は、国際誌(frontiers in Neuroscience. 2017 Jan 4;11:723. doi: 10.3389/fnins.2017.00723)に掲載された。また、慢性低灌流モデルマウスにおける神経線維損傷を拡散MRIで正確に評価するために、脳内における毛細血管内の血流(水の動き)と、血管外の水の拡散を分離して評価する解析手法を開発した。この研究成果は、国際学会(The ISMRM 25th Annual Meeting : 2017年4月ホノルル)にて報告され、また、国際誌(Magnetic Resonance in Medical Sciences. 2017 Feb 13. in printing. doi: 10.2463/mrms.mp.2017-0149)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題申請時における初年度の計画は、各測定の実験系及び評価系の確立と、覚醒状態での動物実験のためのマウス保持装置の開発であった。しかし、平成29年度の前半に保持装置の開発及び実験系は確立され、後半からは実際に病態モデルマウスの測定が開始された。病態モデルマウスの測定及び測定データの解析も順調であり、現時点で、当初の2年目における研究計画の5割ほどを終えている。また、今年度に本研究課題に関して学術誌に2報掲載することができた。これらのことから、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、慢性低灌流モデルマウスにおける脳代謝産物変化についてMRスペクトロスコピーで測定を行い、また、糖代謝について[18F]FDG-PETによる測定を行う予定である。これらの実験結果と、これまでの神経機能や神経線維に関する研究の結果を踏まえて、慢性低灌流モデルマウスにおける認知機能障害のメカニズムについて考察を行う。また、計画以上に進展しているため、次年度の後半には、研究課題申請時の計画には無かった治療薬の評価も計画している。
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