平成30年度は、平成29年度の研究によって明らかになった慢性脳低灌流モデルマウスにおける脳血流低下初期の脳酸素代謝の増加と、慢性期における脳酸素代謝の低下についてより詳細に調べるため、2光子レーザー顕微鏡を使用したカルシウムイメージングによる個々の神経細胞レベルでの神経活動の評価と、MRスペクトロスコピーを使用した脳代謝産物濃度の評価を行った。 本研究により、安静時における自発的な神経活動および、感覚刺激時における神経活動はどちらも、脳血流低下の直後(~1週間)に異常な増加を示し、慢性期(3週以降)には脳血流低下前よりも減少することが明らかとなった。また、脳血流低下の直後において、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の増加が示され、慢性期においてグルタミン酸は脳血流低下前と同程度の濃度まで低下することが明らかとなった。 本研究結果より、慢性脳低灌流モデルマウスにおいて、脳血流低下により十分な栄養や酸素が脳に届いていないにもかかわらず、脳血流低下の急性期には過剰な神経活動が引き起こされてることが明らかとなった。したがって、急性期におけるこの需要と供給の差が、慢性期における神経活動の低下と神経線維の病変を引き起こし、これが脳機能障害の原因であることが示唆された。 この研究成果について、国内学会(第61回日本脳循環代謝学会学術集会:2018年10月)にて報告を行い、最優秀ポスター賞を受賞した。
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