研究課題/領域番号 |
17J06391
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
後藤 千恵子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 蛍光顕微鏡 |
研究実績の概要 |
本研究は,アブラナ科植物の自家不和合反応における雌ずい乳頭細胞内の「自己」情報の流れを,各種ライブイメージング技術を駆使して解明することを目的とする.本研究を推進するにあたり,最先端のライブイメージング技術を習得することが重要であると判断し,初年度である今年度は顕微鏡プラットフォームが完備された仏国植物分子生物学研究所(IBMP)の,Marie-Edith Chaboute 博士の研究室に長期滞在し共同研究を進めた. 共同研究先での共焦点レーザー顕微鏡観察により,解析中のタンパク質が核に局在することを示唆する結果を得た.観察を共同作業で行った際,これまで検出が困難であった,根端での解析対象タンパク質の核小体への蓄積が比較的明瞭な状態で検出された.これは共同研究による技術改善としての成果であり,今後予定している自家不和合反応時の細胞内Ca2+等の綿密なモニタリング(蛍光タンパク質を利用)に応用可能である. 最近,核酸―タンパク質間の相互作用を蛍光寿命顕微法(Fluorescence Lifetime Imaging Microscopy : FLIM)によりタバコの葉で検出する実験系が発表された(Camborde et al. 2017. nature protocols).これを参考に,シロイヌナズナの根で同様の相互作用を検出する系の確立を試みている.現在までに,ポジティブコントロールであるH2B-YFP発現体で,核酸―タンパク質間相互作用が検出されるという予備的な結果を得た.この系は,シロイヌナズナにおけるシグナル伝達経路研究の発展に寄与することが期待される. 上記の蛍光顕微鏡技術の習得と並行して,自家不和合性情報伝達系解明のための各種植物材料の準備を,受入研究室の方々の協力を得て進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は海外の共同研究先での蛍光顕微鏡技術の習得を優先して行った.そのため,当初の計画のうち約半分にあたる観察および新規相互作用因子の同定はほとんど進んでいない.しかし,計画の約半分にあたる植物材料の準備は受入研究室の教員・技術補佐員の方々の協力によりほぼ滞りなく進んでおり,加えて当初は予期していなかった技術改善により別の成果が得られた.これらのことを総合して考え,進歩状況は「おおむね順調に進展している」であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度の前半は,シロイヌナズナにおいて核酸―タンパク質間相互作用をFLIMで検出する系の確立を引き続き行う.次年度の後半以降は,自家不和合反応時の細胞内環境変化の計測および自家不和合反応に重要な受容体SRKの相互作用因子の同定を行う.細胞内環境の変化および新規因子の同定を通じて,自家不和合反応時のシグナル伝達経路の解明を目指す.
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