研究課題/領域番号 |
17J06398
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
木村 妙子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 臨床研究クラスタ脳機能イメージング研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | タウ / 認知症 / タウオパチー / PET / MRI / イメージング |
研究実績の概要 |
認知症などの加齢性神経変性疾患は、その多くが病理学的特徴としてタウたんぱく質の細胞内封入体が現れる。このような凝集性タウ細胞内封入体の存在は認知機能低下や脳萎縮と強く相関していることが知られている。凝集性タウ細胞内封入体を形成する神経変性疾患を総称してタウオパチーと呼ぶ。タウオパチーの発症機序は未だ不明であるが、診断法・治療法の確立は社会的にも急務な課題となっている。近年、タウオパチーの発症機序として、異常たんぱく質のプリオン様伝播仮説が唱えられている。本研究者はこれまで量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所(放医研)に所属し、多くの生体脳イメージング技術を学び、特にタウオパチーの病態を生体で評価しうるタウPETイメージング、脳萎縮、脳血流変化を評価しうるMRI、さらに細胞レベルでの病態変化を追跡しうる二光子顕微鏡蛍光イメージングを活用することでタウ病態の継時的変化を解析することが可能となった。このような状況を踏まえ、凝集性タウ伝播のin vivoにおける評価系の確立、動物モデルの開発に着手した。さらに生体イメージング技術を駆使して伝播メカニズムの解明を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)タウオパチーモデルマウス病態評価系の基盤整備 受入研究者が放医研にて系統維持しているタウオパチーモデルマウス(rTg4510)の生体イメージングによる病態評価系を確立するため、タウPETイメージング技術の改良を進めてきた。タウPETリガンドとして半減期が比較的長い(110分)フッ素18標識リガンドである[18F]PM-PBB3を活用し、汎用性の高い解析技術の確立を目指した。結果として、[18F]PM-PBB3-PETは60分の撮像時間で十分であり、タウ病変を早期から検出できることから、経時的なタウ病変の非侵襲的評価に極めて有用である。 以上から[18F]PM-PBB3-PETによりrTg4510マウスのタウ病変の長期的評価が可能なことが示され、タウを標的とした治療法の開発に有用なツールになることが示唆された。この内容は現在論文作成中である。 2)物理的損傷モデルによるタウ伝播の誘発 多くの研究グループは凝集性タウ伝播動物モデルの作成に、凝集性線維のモデルマウスへの脳実質に投与を行なっている。本研究では凝集性タウ線維を投与しなくとも、機械的脳圧迫によってタウ病変がPETイメージングによって検出されることが明らかとなった。脳血流による変化、脳組織の直接的なダメージなどが原因と考えられたが、まだタウ病変を誘導する要因は明らかになっていない。現在、再現性の獲得と因子の特定を目指した研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度より異常タンパク質の伝播研究のパイオニアである東京都医学総合研究所の長谷川成人先生のもとで研究を進めていく為に、受入研究機関の変更をする。 タウ細胞間伝播のメカニズムの解明を目指して、タウseedの脳実質打ち込みマウスモデルにおいて病理タウの蓄積と炎症が相関することから、ミクログリアの活性化やアストロサイトの肥大化などを追跡することで、神経炎症との関連性に着目していく。 タウの機能異常を評価するためにも、今後Phos-Tag SDS-PAGE法を活用してリン酸化状態の解析も同時に進める。
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