研究課題/領域番号 |
17J06408
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
伊藤 友一 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(SPD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 未来思考 / 展望記憶 / 時間概念 |
研究実績の概要 |
未来思考においては,将来実際に経験すると思える出来事のイメージが求められる。したがって,将来起こることがおよそ確定している物事をうまく取り込みながらイメージ表象を作り上げる必要がある。そこで,考えるべきことが自発的に頭に浮かんでくるような仕組み(展望記憶的なシステム)が未来思考中に作動しているのかどうかを検討する行動実験を実施した。結果として,展望記憶的システムが未来思考中に作動し,適切な未来思考を支えていることが確認された。この研究結果は,これまでに取得していたデータと合わせて論文として投稿され,学術誌に掲載された。 また,未来思考における展望記憶的システムの神経科学的な背景を探るための実験を開始し,予備実験を行った段階である。これについては,未だ課題の調整を必要としているため,翌年度も継続して実験を行う必要がある。 うつ病などの精神疾患と未来思考,特に展望記憶的システムにとって重要な前頭葉の特定の部位の機能との関連を構成論的に検討するため,計算論的研究の準備を行ってきた。研究をより進めるために,現在,海外の研究室との共同研究体制を整えている最中である。 また,うつ病や不安症などの精神疾患で,未来思考をし始める際に,どのような神経活動が生じているのかを検討するため,身体及び思考の方向性(過去/未来,ポジティブ/ネガティブ)に着目した脳波実験を実施している最中である。 なお,昨年度に引き続き,慶應義塾大学医学部の協力のもと,うつ病あるいは不安症と診断された患者を対象とした,時間的概念(過去・未来)と感情価(ポジティブ・ネガティブ)との潜在的な連合関係について検討するための行動実験も実施した。臨床群は予定の人数分を取り終え,データ解析中,健常対照群は次年度4月に取り終える予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,派生的な実験も含め,多くの実験を同時並行的に進めることができた。そして,2本の論文を投稿,うち 1 本は出版済みとなっており,目に見える成果を残せている。したがって,全体としてはおおむね順調に進められたと評価しているが,課題設計の困難さから fMRI 研究の進捗は思わしくない。計算機モデル研究の領域で著名な研究者とのコネクションを持つことができ,協力が得られるようになったため,来年度は計算論的アプローチによる研究を飛躍的に進められると見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,まず時間概念と感情化の連合関係を検討する実験を早々に完了させる。次に,未来思考中の自発的な概念活性化の神経科学的な背景を検討する実験と,未来思考開始時の身体状態と神経活動のに関する実験を完了させる。そして年度後半は,計算機モデル研究を集中的に進め,これまでに蓄積した知見のまとめとなる研究を行う。
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備考 |
新学術領域「時間生成学」の第2回領域会議において,本年度研究成果と関わりのある以下の研究発表も行った。 伊藤友一・田仲祐登・辻幸樹・品川和志・柴田みどり・寺澤悠理・梅田聡 主体性と感情価に基づく未来思考の神経メカニズムの検討 (2019) 新学術領域「時間生成学」第2回領域会議 (松山,2月)
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