研究課題
恐竜類を含む主竜類の進化過程と多様性変動は主に骨の形態的特徴から議論されてきた,一方で,本研究は内臓消化器官に着目した.特に『胃』という内蔵消化器官は食物の物理的・化学的分解を執り行う重要器官であり,生物の効率的な栄養吸収を支える重要器官である.本研究では主竜類の持つ『胃石』に着目し,胃石から胃の情報抽出を試みる.これにより胃の進化過程を復元し,約2億5000万年の主竜類進化史の中で胃の進化がどのような役割を果たしてきたのか検証する.平成29年度は主に,ニワトリを用いた動物実験から得られたデータを通じて主竜類の胃の構造復元手法の構築に取り組んだ.実験の結果,胃石は明瞭に食性の違いおよび胃の筋量の影響を受けることが判明した.本実験から,胃石から胃の情報を抽出することが可能であると証明された.本実験結果は今年度の国際学会で発表し,近々国際論文誌に投稿予定である.加えて,平成29年度はモンゴル科学アカデミー古生物研究センター(モンゴル・ウランバートル),アメリカ自然史博物館(アメリカ合衆国・ニューヨーク),ユタ州立大学イースタン先史博物館(アメリカ合衆国・ユタ)を訪問し,化石主竜類を対象とする調査を行った.予察的な解析から,一部の恐竜類は植物食性への適応と胃が平行進化していた可能性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
今年度の実験により単一種(ニワトリ)において,条件制御下において胃石から胃の情報抽出に成功した.この成果により,研究を野生主竜類の胃石と胃の関係性解明に拡大することができる.北海道大学総合博物館および北海道大学植物園が所蔵する鳥類標本に基づいた予察的な解析の結果,主竜類全体でも胃と胃石の関係性はニワトリを用いた動物実験から得られたデータと整合的である事が示されている.これらの成果により,研究の最終段階である化石主竜類の胃石を用いたアプローチの準備が整いつつある.
今後は主竜類全体の傾向をより正確に検証するため,サンプル数の拡大に努める.加えて,各国の博物館を訪問し,化石主竜類の胃石のデータを採取する.平成30年度は中国,ドイツ,カナダ,アルゼンチンなどを訪問し,化石主竜類の胃石のデータを網羅的に取得する.取得したデータに現生主竜類の胃と胃石の関係性を適用し,化石主竜類の胃の進化過程を復元する事で,胃の進化が主竜類の多様性に与えた影響を評価することを目指す.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
巻: 494 ページ: 91~100
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10.1080/08912963.2017.1317766