研究課題/領域番号 |
17J06430
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷川 陽子 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
キーワード | ユビキチン化 / 膜交通 / 栄養応答 |
研究実績の概要 |
本研究は,植物の膜局在型ユビキチンリガーゼATL31による,SNAREタンパク質の局在制御を介した新たな栄養応答機構の解明を目指している。ATL31はシロイヌナズナにおいてユビキチン化活性依存的に植物の栄養応答を制御する因子であり,SNAREタンパク質は膜輸送制御の鍵因子として知られている。これまでの解析から,ATL31の相互作用因子として,TGN局在型のSNAREタンパク質であるSYP61が同定されていた。また,共発現解析の結果から,ATL31が,ユビキチン化によってSYP61の細胞内局在性を変化させることが示唆され,このことから,ATL31がSYP61を介して細胞内の膜交通系を制御することで,植物の栄養応答を制御する可能性が考えられた。そこで今年度は,SYP61のユビキチン化に着目した解析を中心に研究を進めた。 まず,in vitroの解析により,ATL31がSYP61を直接ユビキチン化することを明らかにした。また,N. benthamiana葉における一過的発現系,およびシロイヌナズナ形質転換植物体を用いた解析から,SYP61が植物体内でユビキチン化されることも検証できた。ユビキチン化には複数のタイプがあるが,これについても解析を行ったところ,SYP61が,植物体内でK63タイプのユビキチン化を受けることが分かった。さらに,検出されたユビキチン化のバンドパターンから,SYP61が,K63タイプ以外にも,複数のタイプのユビキチン化を受ける可能性が示唆された。これらのユビキチン化の解析に加えて,syp61機能抑制植物体を用いた生理学的解析も行い,SYP61がATL31と同様に栄養応答に寄与することを示すこともできた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の解析の要であった,ATL31によるSYP61のユビキチン化を検証することができた。また,ユビキチン化部位に変異を入れたSYP61の変異体の作出も進んでおり,おおむね順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
ATL31-SNARE複合体によって局在性を制御される積荷が,ATL31による栄養応答制御の実体であると考えられる。次年度は,膜構造の分画プロテオミクスによって,輸送の標的となるタンパク質の網羅的な同定を目指す。また,ユビキチン化部位に変異を入れたSYP61を発現する植物体を作出し,これを用いてSYP61ユビキチン化の生理的意義を明らかにする。
|