本年度は、Wi-Fi電波を用いた教師無し機械学習技術によるドアの開閉検知手法の研究を行い、これまでの成果を国内外の会議で発表した。本研究では環境内にWi-Fi電波の送信機と受信機を1台ずつ設置し、受信機で取得されるWi-Fi電波の伝搬情報であるチャネル状態情報(CSI)を用いてドアの開閉検知を行った。既存のドアの開閉検知手法として、各ドアにセンサを設置する手法やカメラを用いる手法が挙げられるが、これらの手法は多数のセンサを設置、管理する必要があることや、カメラ撮影によってプライバシーを侵害するという問題がある。本手法を用いることで既に部屋に置かれているWi-Fi機器を用いて、プライバシーに配慮したドアの開閉検知を実現できる。 昨年度は、開閉のラベルが付与されたCSIデータをトレーニングデータとして、教師あり機械学習技術を用いて開閉状態を推定した。しかし、開閉ラベルを付与するのは大きな手間となる。そこで本年度はドアの開閉ラベルが付与されていないCSIデータをトレーニングデータとして用いて、ドアの開閉を検知する手法を提案した。 ドアの開閉は一定の動きであるため、トレーニングデータから頻出する時系列パターンをドア開閉時の時系列パターン(モチーフ)として見つけ、開閉検知時にはモチーフとデータとの類似度を計算することで開閉検知を行う。 生のCSIはドアや他の物体、人等の動きで環境が変化すると値が大きく変わる。そこで提案手法では、まず環境内の移動物体の速度と受信機に対する方向にそれぞれ対応するドップラー効果と反射波の到来方向をCSIから推定し、一定の方向で頻出するドップラー効果の時系列パターンをモチーフとして抽出する。実際の環境において、カメラを用いて取得した真値により評価実験を行ったところ、提案手法は90%程度のドアの開閉検知精度を達成した。
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