研究実績の概要 |
今年度は、肝前駆細胞の活性化を付随する胆管組織のリモデリングそのものの分子基盤についての研究に大きな進展があった。申請者らは、以前より、肝内の胆管組織で発現する転写因子としてKlf5に注目した解析を行っており、これが胆管上皮細胞の増殖を正に制御することで、肝障害時における胆管増生および肝再生に寄与することを既に明らかにしている (H.Okada, M. Yamada, et al., 2018, J Biol Chem) 。特筆すべきことに、慢性肝障害時のKlf5欠損マウス肝臓では、胆管組織の構造維持に異常をきたしていることが示唆されていた。そこで、申請者はKlf5が細胞増殖誘導に加えて「胆管組織構造の維持」という細胞機能にも関与するとの仮説をたて、これを検証することにした。 昨年度までに、胆管のリモデリングの動態を模倣し、かつKlf5欠損による影響をライブイメージングにより解析可能な新規in vitro解析系を構築している。これを用いた解析により、Klf5を欠損することでin vitroにおいてもin vivo同様に、胆管組織構造が崩壊するという現象を明らかにしてきた。このことは、肝障害の胆管の形態変化の際に、転写因子Klf5が制御する組織構造を維持する機構が存在することを示唆している。本年度はKlf5が制御する下流のシグナルおよび標的因子の探索を行った。更にKlf5が胆管組織構造を維持するという仮説を補強するため、慢性肝障害時のKlf5欠損マウス肝臓で認められた、既存の胆管組織構造から遊離する胆管マーカー陽性細胞の細胞が肝細胞由来ではないことを明らかにした。
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