研究課題/領域番号 |
17J06623
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
藤原 正幸 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 脳波 / 位相同期 / 記号コミュニケーション / 実験記号論 / 意図共有 / 意味理解 |
研究実績の概要 |
本研究は,二者が記号を用いたコミュニケーションを通して,記号の意味共有そして意図理解に至る際の神経基盤を解明することを目的とする. 本年度は記号コミュニケーション課題中の全被験者から得られた脳波データから行動指標を用い,ベイズ推定モデルから得られた解析結果に対応した,記号の意味理解や意図共有の際の神経活動を調べた. 年度序盤では,1.意味理解の解析において,メッセージ受信時の同期・脱同期のダイナミクスは,アルファ帯とガンマ帯のそれぞれで,成功・失敗群間で統計的有意差が見られた.この結果は,北九州で行われた国際シンポジウムにて報告し議論を行った. 中盤では,2.意図共有の解析において,成功群・失敗群と記号の送受信の順序などの条件の違いに着目し,位相同期の差を調べた.その結果,低周波のシータ・アルファ帯と高周波のガンマ帯について,統計的に有意な違いが認められた.この結果は国際会議にて報告し指摘を得た.また他大学で,脳波・視線・モーションの3デバイス2者同時計測のトレーニングを行うと同時に,理化学研究所で行われた国際会議に参加・チュートリアルの補助を行った. 終盤では,タイで行われたワークショップにて,階層的な神経モデル化と神経活動計測のロードマップを示し議論を行った.さらに他大学で,脳波計測のトレーニングおよび神山神経科学セミナーを実施,招待講演を行った. 今年度には追実験(または新実験)は実施しなかったが,2箇所の他大学で計3ヶ月間,脳波計測の実地トレーニングを受け,訪問時には即時に高い精度で計測できる態勢,そしてJAISTでは簡易的な脳波計測環境をそれぞれ整えた.一方で,二者間の脳波位相同期ネットワークの(非)類似性を調べるためのプログラム実装が完了したが,適用する条件を模索している途中である. ジャーナル論文は次年度前半には英文誌に投稿予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果として,1.意味理解について,メッセージ受信時の同期・脱同期のダイナミクス,および,2.記号使用の文脈(メッセージ送受信の順序)の違いに着目した解析により,低周波数帯(シータ・アルファ波帯)と高周波数帯(ガンマ波帯)において,成功・失敗群間で有意差が見られた.これらは,本年度の目標であった,記号の意味理解と意図共有に関わる神経活動の解明に寄与するものであることから,概ね期待通り研究が進展したと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
年度前半では,既に得られた成果について,現在執筆中のジャーナル論文で報告する.そして,二者間の脳波位相同期ネットワーク解析へと進む予定である.この解析に用いるネットワーク間(非)類似性については,解析指標の選定および実装が既に完了している.このため,妥当だと思われる条件などを考慮しながら,定量化および複雑ネットワークの各指標の算出を進め,特徴的な構造を同定する. 年度後半では,年度前半で得られた成果についてまとめ,「記号コミュニケーションの形成を通じて,二者の脳機能ネットワーク,特に位相同期ネットワーク構造が二者の間で類似してくる」という本研究の(作業)仮説の真偽についてジャーナル論文で報告する.
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