今年度の研究課題の進捗状況については,①前年度の成果を論文化し国際誌に掲載されたこと ②前年度の知見を実験室から日常生活へ拡張したこと,③反すうの具体化トレーニングの開発を進めたこと,の3点がある。この3点によって,青年の抑うつ予防に反すうの具体化トレーニングが有効であることが国際的に認められ,反すうの具体化トレーニングの開発が進展したといえる。その他にも,青年に対する抑うつ予防介入の実践(既存のプログラム)を前年度に引き続き,アウトリーチ活動として実施し,地域のメンタルヘルスの改善に貢献した。現在は4本の論文を投稿中で,今後の業績の増加も期待される。①については,実際のネガティブ体験に対する反すうの違いが,その後に実際に行った回避行動にどのような影響を与えるかについて実験を行い,具体的反すうを誘導された参加者においてのみ,失敗後のネガティブ気分が緩和されることを明らかにした研究が国際誌に掲載された。②については、大学生130名を対象に,10週における5時点の縦断的調査を実施し,達成が困難な目標に取り組んでいる青年において,具体的反すうを多く行っているほど,2週後の目標からの回避行動が少なかったことを示した。この結果は,反すうの具体化トレーニングが回避行動を低減し抑うつを予防するという本研究課題のモデルを日常生活レベルの知見で支持するものであり,本研究課題のモデルの妥当性を重ねて実証したといえる。③については、反すうの具体化トレーニングの第一人者であるEdward Watkins 氏と共同研究を行っている日本人研究者グループとディスカッションの機会を得ており,反すうの具体化トレーニングに関する有益な資料の共有を行うことができた。
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