研究課題/領域番号 |
17J06767
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
武田 貴成 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
キーワード | 亜鉛 / 細胞外アデニンヌクレオチド代謝 / 亜鉛欠乏症 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、亜鉛欠乏による炎症のメカニズム解明を目指し、主に細胞外アデニンヌクレオチド代謝に注目して研究を進めた。 具体的には、当該年度実施した研究により、主に①in vitro系において亜鉛欠乏培養が細胞外アデニンヌクレオチド分解酵素の活性を大きく減弱させることを確かめ、研究課題の仮説を裏付ける基礎を固めた。さらに②この酵素活性の低下によって、実際にアデニンヌクレオチド分解まで影響するのかを調査するため、新たにHPLCを利用した解析系を立ち上げ、亜鉛欠乏培養により正常なATP、ADPの除去、およびアデノシン産生が大きく阻害されていること見出した。これに加え、③in vivo解析においても、低亜鉛食の給餌がin vitroの結果と同様に各酵素活性の低下、およびそれに伴った細胞外アデニンヌクレオチド分解の減退を引き起こすことを見出した。 このような当該年度の研究により、亜鉛欠乏によって正常な細胞外アデニンヌクレオチド代謝が妨害されるという仮説を裏付ける解析結果を得た。これにより今後の研究の方針が決定したほか、これまでに亜鉛栄養と細胞外アデニンヌクレオチド代謝との関連を示した報告は知られていないことから、本解析結果は新規性・独立性という点において大きな意義を持つ。また、今回樹立した各酵素活性の測定系、およびHPLCによる定量系は簡便且つ正確であり、今後本研究課題を遂行していく上でも有用な手法となることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在まで、生化学的な手法を中心に解析を進めたが、培養細胞を用いた解析系では短期間で概ね予想通りの結果が得られたため、年度内に動物実験系に移行することができた。この動物実験においても期待していた結果を得られることができたため、計画していた以上に研究が進展したと判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの解析では主に酵素活性の変化などに焦点を当てて解析を進めてきたが、今後はより直接的に「炎症」を調査する。 そのため今後は炎症性サイトカインの定量や、皮膚炎などの病理所見による症状の観察を含めた解析を進めたい。このような動物実験においては解析結果を得られるまでに長期間を要する他、期待した結果(亜鉛欠乏による細胞外アデニンヌクレオチド代謝の妨害が大きく寄与している、など)が得られるのか不明であるため、並行していくつかの症状を調査し、どの症状において特に細胞外アデニンヌクレオチド代謝が大きく寄与するのか、広範な解析を進める必要がある。
|