研究課題
本研究では、亜鉛欠乏症による炎症などの症状のメカニズム解明を目指した。特に、細胞外ATP代謝に関わる主要な分解酵素の多くが分泌型亜鉛要求性酵素であることに着目し、亜鉛欠乏症と細胞外ATP代謝との関連について解析を進めた。前年度の解析により、細胞外ATP代謝に関わる分泌型亜鉛要求性酵素(ALP、CD73、ENPP)の酵素活性が亜鉛欠乏によって著しく低下することを実証した。そこで今年度は、これらの分泌型亜鉛要求性酵素がどのようにして亜鉛を獲得し、活性化するのかということについて解析を進めた。前年度までの解析により、ALP、CD73の活性化には、初期分泌経路に局在するZNT亜鉛トランスポーターの機能が必須であるが、ENPPの活性化には必須でないことが明らかとなっていた。そこで野生型株またはZNTを欠損させた細胞株からALPを精製し、この精製タンパクを用いた解析を進めた。その結果、ZNTを欠損させた細胞株由来の精製ALPは、野生型株由来の精製ALPに比べ、酵素活性が著しく低下していたほか、含有している亜鉛量も減少していた。以上の解析結果より、ZNTを欠損させた細胞では、ALPなどの分泌型亜鉛要求性酵素は活性中心の亜鉛を失っており、その影響で酵素活性を消失していると考えられた。このような、実際の精製タンパク質を用いて亜鉛量を測定した解析はこれまでになく、この成果は分泌型亜鉛要求性酵素の生合成経路内での活性化機構を考える上で重要な知見となる。また本研究により、正常な細胞外ATP代謝の維持には、ZNTの機能が必須であることが分子レベルで明らかとなった。今後は実際の炎症などの症状において、亜鉛欠乏による細胞外ATP代謝の破綻がどの程度寄与するのか、生体レベルでさらなる検討を進める必要がある。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Biological Chemistry
巻: 295 ページ: 5669-5684
10.1074/jbc.RA120.012610