研究課題/領域番号 |
17J06775
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 聡太 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 原子核構造 / 原子核殻模型 / ベータ崩壊 / 不安定核 / 中性子過剰核 / 核力 / 量子多体問題 / カイラル有効場の理論 |
研究実績の概要 |
原子核物理の究極の目的の一つは、核子間に働く相互作用(核力)に基づいて原子核構造を理解し、ひいては宇宙における物質創成の歴史の理論的解明を促すことである。その目標に向け、近年大きく進展しているカイラル有効場の理論に基づいた核力を出発点に、核子系の量子多体問題を解く殻模型計算のインプットである、バレンス核子間に働く有効核力(有効相互作用)の導出を行った。これによりpf-shell領域と呼ばれる質量数領域で、偶偶核の第一励起2+状態のエネルギー、48,50Cr同位体の回転バンド,48CaのM1遷移など、この領域で特徴的な物理量を、実験へのフィットに基づく現象論的な有効相互作用に基づく記述と同程度実験データに整合した結果が得られた。 一方で、多体手法(殻模型)自体の妥当性を検証すべく、質量数40ー50付近の77の核種について中性子過剰核におけるベータ崩壊の系統的記述を行い、現存する理論計算に比べて極めて高精度でベータ崩壊半減期と遅発中性子確率を記述した。この研究では、第一禁制遷移が半減期に与える影響が中性子数の増加に伴う核構造の変化によって増大することや、偶偶核からのベータ崩壊において低エネルギー領域でGamow-Teller型遷移の強度が増大する機構が陽子中性子間の相関であることなどを初めて微視的な観点から議論した。この機構はより一般の中性子過剰核でも成り立つことが期待され、宇宙における元素合成過程の理論計算に与える影響等についても今後詳しく調べていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の成果としては、査読付き会議抄録1報,査読付き論文1報(Physical Review誌に投稿中)を投稿し、国内会議3件・国際会議1件で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、計画通り核力に依拠した殻模型有効相互作用の導出を遂行し、実験的なアクセスの難しい領域での予言を目指す。また、新たな着想としては、殻模型のインプットとなる有効相互作用のパラメータをベイズ的に推定する方法論にも着手している。
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