研究課題/領域番号 |
17J06861
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
荒川 創太 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | コンドリュール / 隕石 / ダスト / 密度進化 / 微惑星 / 惑星形成 / 太陽系外縁天体 / 熱伝導率 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、惑星の前駆天体である「微惑星」が原始惑星系円盤中でどのように形成されたのかを理論計算によって明らかにすることである。本年度は、以下の3つの問題に取り組んだ。 1. 充填率1%から56%までの様々な塵集合体に対して熱伝導率の計算を行った。その結果、静的圧縮を経験した塵集合体の熱伝導率は充填率と平均配位数の冪関数で非常によくフィッティングできることがわかった。さらに、数値計算から得られた関係式によって、これまで様々な条件下で行われてきた室内実験の結果を統一的に説明できることを確認した。 2. 複合コンドリュールの起源に関する研究も行った。我々は以前に出版した論文において、複合コンドリュールの形成は結晶化したコンドリュールと過冷却状態の前駆体が衝突・付着によって説明できることを示している 。しかし、過冷却状態が長時間にわたり維持される機構は不明であった。本年度は、この過冷却状態が維持されるコンドリュール形成場はどのようなものか検討した。結論として、光学的に薄い衝撃波中では、高温のガス分子がコンドリュールに衝突することによる加熱と衝撃波加熱領域の外部への輻射冷却が釣り合い、コンドリュールが長時間過冷却状態を保持し、複合コンドリュールが形成されうることが明らかになった。 3. 岩石微惑星及び氷微惑星がいつ形成されたのかという情報は、微惑星の集積機構としてどの理論モデルが妥当かを判断する際に鍵となる。巨大衝突の数値計算及び潮汐進化の準解析的な計算から、大型の太陽系外縁天体の衛星が溶融した1000 kmサイズの天体同士の巨大衝突によって形成されたとすると、衛星のサイズや軌道の特徴、それらの分布を説明できることが明らかになった。この結果は、半径100 kmより大きな太陽系外縁天体が太陽系初期の数百万年以内に形成されたことを強く示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画通り、コンドリュールの形成環境に関する研究を行い、光学的に薄い衝撃波がコンドリュール形成場として適当であることを示した。この結果は国際査読誌に投稿中である。この成果は、初期太陽系の内側領域に存在したダスト粒子の多くは、光学的に薄い衝撃波による瞬間的加熱および短時間での冷却を経験していることを示唆するものである。
また、昨年度実施した塵集合体の熱伝導率に関する研究をさらに発展させ、複数の実験的研究の結果を再現できる経験式を得た。この成果を国際査読誌Icarusにおいて発表することができた。
加えて、太陽系外縁天体の衛星形成およびその後の潮汐進化に関する研究を行い、太陽系外縁において100 kmサイズの微惑星が数百万年という短時間で形成されたことが明らかになった。この結果は国際査読誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
1. 塵集合体の熱伝導率の理論モデルを用いて、彗星の構成粒子の粒径、組成などを制約する。また、得られた結果をコンドライト隕石の構成粒子と比較することで、コンドリュールと固体微粒子の熱史を議論する。 2. 低密度な塵集合体について、熱伝導率と充填率の関係をフラクタルな塵集合体の幾何学から導出する。
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