本研究の目標は、惑星の前駆天体である「微惑星」が原始惑星系円盤中でどのように形成されたのかを理論計算によって明らかにすることである。本年度は、以下の4つの問題に取り組んだ。 1. 塵粒子凝集体(ダストアグリゲイト)の熱伝導率を、その幾何学的構造から理論的に導出することに成功した。本研究内容は Progress of Theoretical and Experimental Physics 誌に発表した。 2. 木星の衛星であるガリレオ衛星の形成に関して、固体微粒子の光泳動によって周木星円盤に面密度・圧力の極大が形成され、衛星の軌道が決まるというモデルを提示した。本研究内容は Astronomy & Astrophysics 誌 に発表した。 3. 彗星表層の熱慣性の温度依存性に注目し、氷微惑星がどのような粒径の塵粒子集合体の集積によって形成されたのかを議論した。この結果については次年度に論文にまとめる予定である。 4. 太陽系外縁天体の衛星系の潮汐軌道進化について、計算手法の改良を行なった。衛星及び中心天体の分化・溶融状態は太陽系外縁における微惑星の形成・集積機構を反映し、集積タイムスケール等によっては衛星・中心天体共に未分化となり得る。我々は未分化の 2 天体からなる衛星系について熱進化と潮汐軌道進化のカップリング計算を行い、衛星系が観測されているような離心率 0.1 程度の系に進化する初期条件は非常に限られていることを明らかにした。本研究内容は現在査読誌に投稿中である。
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