研究課題/領域番号 |
17J06914
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
村岡 兼通 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 光触媒 / 人工光合成 / 酸窒化物 / 半導体 |
研究実績の概要 |
申請者の所属研究室では、半導体と錯体両者の長所を生かした複合光触媒システムを開発した。 本系では、弱い可視光エネルギーを利用して電子を高エネルギー側へと2段階で汲み上げ、CO2を水素貯蔵物質であるギ酸へと変換することができる。このような錯体/半導体複合光触媒を発展させる上で問題となっていたのは、適用できる半導体が3種類に限定され、そしてそれら全ての半導体の最大吸収波長が500 nm以下と限られていることであった。太陽光エネルギーの有効利用のためには、バンドギャップの小さな半導体を使うことが望ましい。しかし、小さなバンドギャップは酸化還元反応の駆動力の低下に直結し、かつ目的とする反応に対する熱力学的ポテンシャルを満たせなくなるという問題にも直面する。このような2段階励起で駆動する錯体/半導体複合光触媒が2013年に開発されて以後、有効な半導体材料が3種しか発見されていないという事実は、その開発が容易でないことを明確に示している。 従って、本研究では、500 nm以上の低エネルギーの可視光を用い、水を電子源としてCO2還元を駆動できる金属錯体/半導体複合光触媒の創製を目的としている。 平成30年度は500 nm以上の可視光を吸収できるTa3N5光触媒の合成検討をした。その結果、Ta3N5光触媒と従来のRu二核錯体とを組み合わせた金属錯体/半導体複合光触媒はCO2還元反応に活性であることを明らかとした。 この結果を学術詩へ投稿し高い評価を得た。特に、SiO2微粒子上にTa3N5の前駆体酸化物であるTa2O5を被覆したものを用いた場合、アニオン欠陥の減少に起因する光触媒活性の向上が確認された。これらの結果に基づいたRu二核錯体/Ta3N5/SiO2複合光触媒に関する論文を執筆し、学術詩へ投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二酸化炭素光還元に有効な半導体―錯体複合光触媒の研究において重要な課題のひとつである、広域可視光応答可能な新規半導体材料の探索研究に精力的に取り組んだ。特にTa3N5と従来のRu錯体との複合光触媒は広域可視光に応答することを明らかとし、学会誌から高い評価を受けた。さらにTa3N5をナノ構造化することで、従来のバルク型Ta3N5よりも格段に高い光触媒活性を実現することを見出し、この成果を論文投稿し審査段階まで進めることができた。今後、Ta3N5に代替できる新規の酸窒化物を開発し、汎用性を拡大することにより研究がさらに展開していくと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
29年度にフランス・レンヌ第一大学へ留学した際の研究の応用として、ランタノイド元素(Ln)とタンタル(Ta)との酸窒化物(LnTaON)の合成に取り組んだ。詳細な合成検討をすることにより複数のLnにおいて、LnTaONをフルオライト構造の単一相として得ることに成功した。またRu二核錯体と組み合わせた場合、可視光照射下CO2をギ酸へと変換できることを見出した。この結果は研究例が全くないため、ランタノイド元素を利用したCO2還元反応についての検討をし、論文執筆をする予定である。
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