研究課題/領域番号 |
17J06926
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
劉 秋実 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | B型肝炎ウイルス / ペプチド / ナノキャリア / ドラッグデリバリーシステム |
研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)感染に重要なLタンパク質のペプチドを中性リポソーム(LP)の表層に提示した。ヒト肝癌由来細胞HepG2とNa-taurocholate co-transporting polypeptide(NTCP)過剰発現HepG2を用い、蛍光標識したペプチド提示型LPの細胞内取り込みを解析した。その結果、pre-S1(9-47)-LPは、NTCPの有無と関わらず、HepG2細胞と結合後、エンドサイトーシスにより細胞内に侵入したことが明らかになった。次に、pre-S1領域の断片化ペプチドを用い、HepG2細胞との結合及び侵入能を担うドメインを解析したところ、pre-S1(30-42)領域が最も強いことが判明した。また、同活性はヘパリンにより濃度依存的に阻害され、グリコサミノグリカン硫酸化を阻害剤sodium chlorateで処理したHepG2細胞、あるいはグリコサミノグリカン切断酵素heparinase Iで処理したHepG2細胞において著しく低下した。さらに、ヘパリン固定化ビーズと強く結合し、HBVジェノタイプ間でよく保存されたアミノ酸残基(Asp-31、Trp-32、Asp-33)に変異導入により、同残基群がヘパリン結合能の中心的役割を担うことが判明した。本pre-S1(30-42)ペプチドはHBVの初期感染機構において、細胞表層heparan sulfate proteoglycanと相互作用することが重要と考えられた。最後に、Pre-S1(30-42)ペプチドはin vitroにおいてヒト肝臓由来細胞への高い親和性を有していたことから、抗がん剤ドキソルビシンを封入した該ペプチド提示LPによりHepG2に対する高い細胞傷害活性を証明した。以上から、pre-S1(30-42)ペプチド提示したLPは、新規HBV模倣ナノキャリアとして有望と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
B型肝炎ウイルス(HBV) 由来の「能動的標的化機構、細胞内侵入機構、エンドソーム脱出機構」を人工ナノキャリアに再構成するため、HBV初期感染機構の分子レベルの解析は不可欠と考えられる。昨年度では、HBVの標的化及び細胞内侵入機構を解析した。その結果、HBVの標的化及び細胞内侵入に必要なドメインを同定した。当ドメインを機能性ペプチドとしてナノキャリアの表層に再構成することに成功した。In vitroにおいてヒト肝臓由来細胞への高い親和性を有していたことから、抗がん剤ドキソルビシンを封入した該ペプチド提示リポソームによりヒト肝臓由来細胞HepG2に対する高い細胞傷害活性を証明した。以上から、pre-S1(30-42)ペプチドを提示したナノキャリアは、新規HBV模倣ナノキャリアとして有望と考えられた。 上記の研究成果は、国際学術雑誌2報に公表し、国内外の学会で発表を7回行った。以上から、期待以上の研究の進展があったと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
HBV 由来「能動的標的化機構、細胞内侵入機構、エンドソーム脱出機構」を解析及び活用し、リポソーム(LP)やLNP(lipid nanoparticle)等の脂質ナノキャリアに同機能を再構成する。その結果、生体内投与可能で、ヒト肝臓細胞特異的に侵入後、エンドソームから効率的に脱出して細胞質内に内封物を送達できる、臨床応用に近い化成品から構成される人工ナノキャリアの開発を最終目的とする。 本年度は、最適化脂質ナノキャリアに最適化ミリストイル化pre-S1(2-47)ペプチド、そしてHBV標的及び細胞内侵入能を担うペプチドを様々なトポロジー(並列、直列、N末固定、C末固定等)で提示させ、Na-taurocholate co-transporting polypeptide(NTCP)またはheparan sulfate proteoglycan(HSPG)を介する標的化能、細胞内侵入能及びエンドソーム脱出能を検討する。また、Luciferase siRNAを封入したLPを用いて、Luciferase発現ヒト肝臓由来細胞に感染させ、早期のエンドソーム脱出や高い遺伝子発現抑制能を検討する。 能動的標的化機構、細胞内侵入機構、エンドソーム脱出機構を搭載した脂質ナノキャリア(LPとLNP)に、PEG等のステルス化分子を修飾し、近赤外蛍光色素(DIRなど)で標識したLuciferase発現ヒト肝がん由来細胞を有するヌードマウスに静脈内投与し、In vivoイメージング装置で生体内動態を解析するとともに、Luciferase siRNA封入リポソームを用いてIn vivoでも効率よく遺伝子発現抑制するか検討する。
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