研究課題
①スパースモデリングを用いたソフトウェアの定量的評価スパースモデリングとは、劣決定問題において求める解が非常に疎であるときに、目的に応じた制約項を課して方程式の解を得る手法である。本研究は、実際の観測データを解析する前に、この手法が宇宙磁場研究においてどれ程の性能が発揮できるか十分に理解するためのものである。方法としては、非常にシンプルな偏波スペクトルのモデルを設定し、様々な物理量を系統的に変えたときに、スパースモデリングによって正解の偏波スペクトルのモデルをどの程度再現するか定量的に調べた。これらの研究は現在論文にまとめている。②銀河モデルにおける偏波スペクトル解析偏波スペクトルをフーリエ変換することで得られるFaraday Dispersion Function (以下FDF) に宇宙磁場の情報が含まれている。しかし、FDFから宇宙磁場の情報を引き出すのは難しく、まずFDFの中に物理情報がどのように反映されているのか詳しく調べる必要がある。本研究では、シンプルな銀河モデルにおいて銀河の大局磁場や乱流磁場、視線方向を系統的に変化させたときに、FDFがどのように振る舞うか定量的に調べた。そこで、視線方向とFDFの明るさに相関があることがわかった。これらの研究は現在論文にまとめている。③国際的な研究活動将来の超大型電波望遠鏡Square Kilometre Array (SKA)国際プロジェクトの試験機であるMurchison Widefield Array (MWA)の観測グループに自分は現在加入している。2018年10月に、MWAグループの拠点の一つであるオーストラリアのパースのCSIROに二週間ほど滞在し、MWAで得られたサーベイデータを用いて偏波解析を行い、低周波における偏波の天体カタログを作成するプロジェクトに携わった。
2: おおむね順調に進展している
スパースモデリングを用いたソフトウェアの定量的評価に関する研究は、2018年度中に結果をまとめて論文を投稿する予定であったが、現在執筆途中である。しかし、国際的な研究においてMWAの観測データを用いた偏波解析を観測グループの方々と協力して研究を行うことができた。さらに、宇宙磁場研究において非常に重要である偏波スペクトルから構築されるFDFの解釈に関する研究を進めることができた。この研究に関しても結果を論文にまとめており、2019年度中に投稿が可能である。以上の研究実施状況から当初立てていた計画と相違なく研究が行われていると判断 したため、おおむね順調であるという評価をつけた。
まずはスパースモデリングを用いたソフトウェアの定量的評価に関する研究の論文の執筆を早急に完了させ、2019年度中に論文の掲載を目指す。その後、銀河モデルにおけるFDFの解析的計算に関する論文をまとめ、こちらも2019年度中の論文の投稿及び掲載を目指す。そして、FDFの解釈に関する理解をさらに深めるために、現実的な銀河モデルに即したFDFの解析的計算を行う。さらに、国際的な研究活動において、MWAグループとの共同研究を進める。2019年度では、MWAの観測プロジェクトに本格的に参入し、データ解析や天体の磁場構造の詳細な解析を行う。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 482 ページ: 2739 - 2749
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galaxies
巻: 6 ページ: 140(1-13)
10.3390/galaxies6040140
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