研究課題
カロースとシロイヌナズナの低カルシウム(Ca)耐性機構について、カロースをアニリンブルー染色によって定量したところ、これまでに順遺伝学的解析によって低Ca感受性を示すことが明らかになっていたglucan synthase like(gsl)変異株では、野生型株で見られる低Ca条件での異所的なカロースの蓄積が有意に少ないことが明らかになった。また、トリパンブルー染色によって細胞死を可視化したところ、これらのgsl変異株は通常Ca条件から低Ca条件に移植した際に新葉に強い細胞死を呈することが明らかになった。また、カロース合成阻害剤の添加によって、低Ca条件での異所的なカロースの蓄積の減少と新葉での細胞死の増加が見られることが明らかになった。以上の結果から、カロースは低Ca条件での細胞死の抑制に寄与し、本葉の展開を可能にする、ということが示唆された。シロイヌナズナ低Ca耐性ゲノムワイド関連解析(GWAS)では、3番染色体と5番染色体に有意なピークが得られた。5番染色体のピークの座乗する連鎖不平衡ブロック内の遺伝子が8個であったため、それぞれの遺伝子の破壊株を取り寄せ、ホモラインを選抜した。今後はこれらの遺伝子の破壊株の低Ca耐性の評価を行ない、シロイヌナズナの低Ca耐性に関する遺伝子の同定を進める。シロイヌナズナの低Ca感受性変異株の原因遺伝子同定については、F1の低Ca感受性を観察し、原因変異の優性劣性を推定したところ、1系統は劣性、2系統は優性または半優性の変異であることが示唆された。現在、低Ca耐性および感受性のF2を選抜し、次世代シーケンス解析の準備を進めている。トマト低Ca耐性GWASでは、昨年度までの結果でGWAS解析を行なったが、現在のところ有意なピークが得られていない。(栽培条件と解析条件を改善予定)。
2: おおむね順調に進展している
カロースとシロイヌナズナの低カルシウム(Ca)耐性機構についての研究は当初の計画以上に進んでいるが、シロイヌナズナ・トマトのGWASとシロイヌナズナ低Ca感受性変異株の原因遺伝子同定についてはある程度の進展はあるとはいえ遅れているため、全体としてはおおむね順調に進んでいる、とした。
研究が計画以上に進んでいるカロースとシロイヌナズナの低カルシウム(Ca)耐性機構については、先に解析を進めていたGSL10については可及的速やかに論文にまとめ投稿する。また、他のgsl変異株の解析についても結果をまとめ今年度中に投稿する。研究がやや遅れているシロイヌナズナ・トマトのGWASとシロイヌナズナ低Ca感受性変異株の原因遺伝子同定については、それぞれの解析を確実に進める。
すべて 2019 2018
すべて 学会発表 (4件)