研究課題/領域番号 |
17J07038
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
兒玉 匡弘 東京理科大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 免疫学 / B細胞 / B細胞受容体 / ユビキチン化 / IgG |
研究実績の概要 |
主に膜型IgG (mIgG) を発現する記憶B細胞は、抗原の再感作時に迅速に活性化して抗体を産生する形質細胞へと分化し、生体内の抗原を排除するという重要な役割を持つ。記憶B細胞への分化や素早い反応についての詳しいメカニズムは未だ不明であるが、先行研究から、それにはmIgGの特性が関与している可能性が示唆されている。これまで、私たちはmIgG1がユビキチン化されることを見出した。そこで本研究では、IgG陽性B細胞の活性化・分化制御機構におけるmIgG1のユビキチン化の役割を明らかにすることを目的とし、野生型mIgG1 (mIgG1-WT) とユビキチン化しない変異体 (mIgG1-2KR) を比較解析し、研究を進めた。 平成29年度の成果として以下の結果が得られた。 1)mIgG1-WTあるいはmIgG1-2KRを発現したBAL17の細胞表面および全mIgG1発現量を比較した結果、mIgG1-WTに比べ、mIgG1-2KRでそれらの発現が亢進していた。また、mIgG1-WTで恒常的なmIgの取り込みおよびリソソームでの分解が促進されていた。以上の結果から、mIgG1の恒常的なユビキチン化は抗原非依存的なmIgG1の取り込み、リソソームにおける分解を促進することによりその発現量を制御していることが示唆された。 2)抗原を認識して架橋された抗原受容体 (BCR) は細胞内のエンドソームを介してリソソームへと取り込まれ、そこで抗原が分解される。分解された抗原はMHCⅡ上にペプチドとして結合し、T細胞へと提示される。そこで、抗原架橋時のmIgG1の細胞内輸送と抗原提示におけるmIgG1のユビキチン化の役割を調べた。その結果、mIgG1のユビキチン化は早期エンドソームから後期エンドソームへの細胞内輸送を促進しているが、抗原提示には影響していないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス個体の免疫応答におけるmIgG1のユビキチン化の意義は未だ明らかでなく、ユビキチン化部位を置換したノックインマウスの完成を待っている状況である。また、ユビキチン化酵素の同定も成功しておらず、今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
ノックインマウスの完成に先立ち、mIgG1-WTあるいはmIgG1-2KRを発現させた初代培養細胞を野生型マウスに移入、免疫をすることで胚中心形成と記憶B細胞分化におけるmIgG1のユビキチン化の役割を調べる。また、ユビキチン化酵素同定の為に、mIgMとmIgG1を比較することで、mIgG1特異的に会合するタンパクを得るとともに質量解析等でリガーゼの同定を進める。
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