今年度は、ユビキチン化誘導機構、生理学的意義の解明に取り組んだ。 抗原刺激によるmIgG1のユビキチン化修飾機構 EGFRでは、その細胞内領域に存在するチロシン残基のリン酸化により、ユビキチンリガーゼであるCblがリクルートされ、ユビキチン化される機構が知られている。また、これまでにmIgGの細胞内領域に存在するITTモチーフはリン酸化されることが報告されている。そこで、mIgG1のユビキチン化とITTモチーフのリン酸化の関係を調べるために、mIgG1-WTまたはmIgG1-WTのITTモチーフのチロシン (Y) 残基がフェニルアラニン (F) 残基に置換された変異体 (mIgG1-Y/F) を発現するBal17λ細胞をBCR架橋し、ユビキチン化を免疫ブロット法で解析した。 mIgG1-WTと比較して、mIgG1-Y/Fでユビキチン化が刺激後に著しく減弱していた。また、BCRシグナル伝達因子のSykの活性化がITTモチーフのリン酸化を誘導することが報告されている。Sykキナーゼ阻害剤 、Srcファミリーキナーゼ (SFK) の阻害剤を用いた結果から、SykおよびSFKによるITTモチーフのリン酸化が、抗原刺激後のmIgG1のユビキチン化を促進していることが明らかとなった。 胚中心応答における役割を調べるためにユビキチン化しないIgG1を発現する細胞をモデル抗原で免疫し胚中心環境を誘導したC57BL/6マウスに養子移入し、5日目の脾臓細胞をフローサイトメトリーで解析した。脾臓細胞中のドナー由来細胞は、主にCD38lo GL7+ GC B細胞の表現形を示した。野生型mIgG1を発現するドナー由来の細胞と比較して、ユビキチン化しないmIgG1を発現する細胞の割合は有意に少なかった。この結果から、胚中心環境において、mIgG1のユビキチン化が胚中心B細胞の増殖を促進することが示唆された。
|