研究課題
申請者は平成29年度にmiRNAスクリーニングを行い、vascular cell adhesion molecule-1(VCAM-1)やE-selectin(SELE)など動脈硬化に重要な接着因子の発現を抑制して、単球の血管内皮への接着を阻害するmiRNAを複数見出した。そこで平成30年度はこれら平成29年度に同定したmiRNAの標的遺伝子探索を主要な目標に掲げ研究を行った。これまで、miRNAのターゲット予測にはtarget scanやTarBaseといったin silicoデータベースに頼る手法がとられてきた。しかしながら、miRNAと標的mRNAの結合にはミスマッチが含まれる、認識配列が7塩基と非常に短く標的となり得るmRNAが数多く存在する、など様々な理由からコンピューター予測のみで標的遺伝子を同定することは困難とされてきた。そこで申請者はRNA免疫沈降およびマイクロアレイ(RIP-Chip)とtarget scanを組み合わせて解析を行い、miRNAの標的遺伝子の同定を試みた。miRNA-翻訳抑制複合体(RISC complex)の主要タンパクであるArgonaute2に対する抗体を用いたRIP-Chipの結果とtarget scanの照合により、候補標的遺伝子の絞り込みを行った。抽出された遺伝子の特徴として核局在と関連する遺伝子が多数含まれることが明らかとなった。興味深いことに、これら核局在と関連する遺伝子の中にヒストン修飾酵素酵素が複数含まれており、miRNAがヒストン修飾酵素の制御を介して接着因子の発現を調節する可能性が示唆された。現在これらヒストン修飾酵素の遺伝子クローニング作業を行っており、成功し次第機能解析を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
申請者はRIP-ChIPを行い、平成29年度に同定した動脈硬化に関与するmiRNAの標的遺伝子を数多く見出している。レポーターアッセイなど生化学的手法を用いてRIP-ChIPの結果の妥当性の検証も済んでおり、これらの結果はすでに分子生物学会、生化学会、EMBL conferenceなど国内外の学会で報告しており、当該研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
今後は平成30年度に同定したmiRNAの標的遺伝子(特にヒストン修飾酵素に着目している)をsiRNAおよびCRISPR/cas9によってノックダウンあるいはノックアウトした際に、実際に接着因子の発現に変化が認められるかについて、in vitroおよびin vivo両者含めて検討する予定である。さらにRNA-seqやChIP-seqなどの網羅的解析手法を用いて、miRNAの標的遺伝子の機能をゲノムワイドな視点からも解析していく予定である。
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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巻: - ページ: -
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