研究課題/領域番号 |
17J07093
|
研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
西山 文愛 総合研究大学院大学, 文化科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
キーワード | ボルネオ / サバ州 / 人と動物 / 宗教変容 |
研究実績の概要 |
申請者は,マレーシア・サバ州の内陸に住む先住民ドゥスンの人々を対象に研究を進めてきた。従来,ドゥスンの人々と,多様な関係が指摘されてきた鳥類との関わりを対象に研究をおこなった。そして,ボルネオ先住民と鳥類が,外部社会との接触や近代化・市場化に伴い,現代のボルネオ社会の中でどのような関係にあり,従来の伝統的な関わりがどのように変化しているのか,その実態を明らかにすることを目的とした。 研究方法は,参与観察と聞き取り調査,文献資料の渉猟である。報告者は,マレーシア・サバ州で計4ヶ月の海外調を実施した。調査では,ドゥスン社会は,1970年以降にキリスト教化が進み,これまでに指摘されてきた,ドゥスンの人びとと鳥類や動植物との関わりに変化が起きていることが明らかになった。また,彼らからは,鳥占いなどをふくむ従来の信仰を否定する言動も観察された。 一方で,狩猟採集や漁撈活動の現場において,従来の精霊信仰と捉えられる行動が観察できた。一体,この現象はどのように理解したらいいのだろうか。そこで,本発表では,市街地近郊において現在も実践されている彼らの狩猟・採集活動と漁撈活動の実態について報告し,それらの活動の中で見られる精霊信仰を明らかにする。そのうえで,なぜ特定の場や状況において,今でも精霊信仰が立ち現れてくるのかについて調査をおこなった。 現地調査の際には,カウンターパートであるサバ大学のポール・ポロドン教授からサバ州の自然環境およびサバの先住民に関する最新の動向についてアドバイスを受けた。派遣先であるサバ大学はサバ州で人類学を牽引してきた著名な大学であり、ポール教授を通じて現地研究者と学術交流を実施できたことは,今後の博士論文執筆のためにも大きな収穫である。 また,研究成果として,2017年12月に国立民族学博物館で開催された「みんぱく若手研究者奨励セミナー」において口頭発表をおこなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度にまとまった調査を実施できたことで,博士論文執筆に向けて十分なデータを収集することが出来た。2018年度は,のべ約半年の現地調査を予定しており,前年度の調査で収集しきれなかったデータを収集する。今後はこれまでに収集したデータの整理と,さらなる文献の渉猟が求められる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は,マレーシア・サバ州の先住民ドゥスンの人たちを対象に,1)市街地近郊において現在も実践されている彼らの狩猟活動,採集活動,漁撈活動の実態についてデータを集める。2)そのうえで,彼らがキリスト教化し,鳥占いなど,従来の精霊信仰を否定する言動が多くなされるなかで,狩猟採集や,漁撈活動の中で見られる精霊信仰の実態を明らかにしたうえで,3)なぜ特定の場や状況において,今でも精霊信仰が立ち現れてくるのかを検討する。 そして,ドゥスンの人たちがなぜ,キリスト教を積極に受容したのかを,彼らの文化的な営みから考察をする。
|