報告者の平成30年度の活動では、2ヶ月半の現地調査と現地調査で得たデータの整理および文献渉猟をおこなってきた。現地調査はマレーシア・サバ州の先住民ドゥスンの人たちを対象に実施した。調査対象者の社会では,従来の「鳥の声」に基づくなどの精霊信仰を否定し、キリストの教えに敬虔であることが美徳であるという態度を、報告者にたびたび示した。一方で,農耕,狩猟,採集,漁撈活動や人生儀礼の場において,人々の間で否定的に語られる精霊信仰と捉えられる行動をたびたび観察した。 そこで本研究では, 彼らの自然を利用した諸活動の実態を把握し、それらの活動および人生儀礼の場で観察された精霊信仰の実態の解明をすべく,以下3点の調査を実施した。1)農耕・狩猟・採集・漁撈活動で実践されている精霊信仰の調査、2)人生儀礼および祭礼で実践されている精霊信仰の調査、3)日常生活で実践されている精霊信仰。 さらに、報告者は現地調査終了後に平成29年度から平成30年度の調査で収集したデータの整理および文献渉猟を中心に研究活動をおこなった。現在は博士論文執筆に取り掛かっている。このように平成30年度は現地調査の実施および、平性29年度から蓄積したデータの整理を実施したことにより、博士論文執筆のための基盤を築けたことが最大の成果である。
|