沖縄県本島中部地域の米軍基地に関するフィールドワークを実施した。中部地区は、沖縄本島のなかでも米軍基地が占める土地面積が広い。北谷町では、町内の約52%が米軍基地に接収されている。また、基地の接収に関しても部分的に返還された地域(例:砂辺、桑江)から未だ全面的に集落が軍用地として接収された地域など様々である。そのため、初年度は、砂辺地区を中心的に調査をしたが、砂辺地区との比較対象として北谷町では砂辺地区、上勢頭地区、に加えて読谷村、沖縄市などの調査を実施した。 実施期間は2018年4月、6月に北谷町砂辺地区の自治会及び郷友会を主な対象に聞き取り調査をおこなった。同年、7月から9月にかけて北谷町・読谷村・沖縄市において比較研究を目的とした調査を実施した。文化人類学・社会学分野を中心に沖縄の基地に関する文献調査をおこなった。その一部においては、調査対象地域で研究報告会を実施した。 調査内容について、主に郷友会を中心に聞き取り調査を実施した。調査項目は多岐にわたるが、主に「元集落の文化的な財産をいかに保存・継続しているか」ということについて焦点を当てて調査を実施した。また、参与観察として実践されている敬老会などの行事に参加した。砂辺地区は隣接する基地による騒音問題によって、基地の部分的な返還後に元集落の住民の他出が顕著である。そのため、元集落から住む人びとによって構成される郷友会と新たに移り住む人びとを中心に構成される自治会との二重の構造ができあがっている。一方、嘉手納基地が隣接する北谷町上勢頭では、元集落である下勢頭との距離も近く、周辺に居住する郷友会の構成員も多い。このような、米軍基地に関する基地接収と返還の状況の差異によって、戦後沖縄の伝統的な文化がいかに保持・継続されているか調査を実施した。
|