次世代の低消費電力集積回路における基盤技術として、スピン電界効果トランジスタが有望視されている。スピン電界効果トランジスタとは、従来のトランジスタにおけるソースとドレインが強磁性体で置き換えられたトランジスタであり、ソース、ドレインの磁化の配置(平行か反平行)によってトランジスタの電流を変化させることができる。従来の「横型構造」を有したスピン電界効果トランジスタにおける問題は、磁化の配置による電流の変調量(MR比)が最大でも1%以下と非常に小さいことであった。申請者は、2015年、従来とは異なり、試料面に対して垂直方向に流れる電流をチャネルの側面からゲート電圧を印加することによって制御する縦型スピン電界効果トランジスタを提案、実証し、これまでに報告されているMR比よりも100倍以上大きなMR比を有するスピン電界効果トランジスタを作製することに成功した。 縦型スピン電界効果トランジスタの実用化に向けて、ゲート電圧による電流変調量を更に増大させ、ゲート電圧による電流変調のメカニズムを解明すること、及び、室温で縦型スピン電界効果トランジスタを実証することが必要である。前者について、ゲート電圧による電流変調量を増大させるために、500nmまでチャネル幅を微細化した縦型スピン電界効果トランジスタを作製し、130%に及ぶ電流変調を実証した。また、ゲート電圧による電流変調に関する実験結果を計算結果と比較することによって、ゲート電圧によって間接トンネル電流が変調されていることを明らかにした。また、酸化物半導体をチャネルとして用いた縦型スピン電解効果トランジスタを作製し、室温での基本的な動作実証に成功した。
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