研究課題/領域番号 |
17J07179
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 峻 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 金属クラスター / 金属酸化物クラスター / 触媒 / 水素化反応 |
研究実績の概要 |
本研究では、バルク構造と比べて特異的な触媒作用を示す触媒材料として知られる金属クラスターおよび酸化物クラスターを組み合わせ、従来の金属ナノ粒子触媒ではみられない特異な反応性を示す金属-金属酸化物複合クラスター触媒を創製することを目標としている。はじめに、最適な金属クラスターおよび酸化物クラスターの構成元素種を探索した。具体的には、予め調製した金属クラスターおよび酸化物クラスターを溶液中で混合し触媒作用を調査することで、酸化物クラスターの添加が金属クラスターの触媒作用に及ぼす効果を検討した。 金属クラスターとして、高分子によって保護された白金族元素のクラスターを用いた。また、5、6族元素から構成される酸化物クラスターを用いた。モデル反応として4-ニトロスチレンの水素化反応を行い、基質のビニル基またはニトロ基の還元への選択性を調査したところ、Mo酸化物クラスターをRhクラスターへ添加することで水素化触媒作用は大きく変化し、Rhクラスター単独ではほとんど進行しないニトロ基の水素化反応が進行した。この理由を調査するためMo K殻およびRh K殻XAFS測定を行ったところ、Rhクラスターの存在下Mo酸化物クラスターは水素ガスの導入によって可逆的に還元されることが明らかとなった。従って、Mo酸化物クラスターの添加による水素化触媒作用の劇的な変化は、Rhクラスターに吸着した水素によってMoが部分的に還元され、選択的に極性官能基であるニトロ基を還元する活性サイトを形成することに由来すると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属クラスターおよび酸化物クラスターとして最適な構成元素種を探り出すため、予め調製した種々の金属クラスターと酸化物クラスターを混合し、触媒として水素化反応を行っている。そして、RhクラスターおよびMo酸化物クラスターからなる複合クラスター触媒がニトロ基の水素化反応において有望である可能性を見出している。また、XAFS測定から、反応中にRhクラスターに吸着した水素によってMo酸化物クラスターが部分的に還元され、ニトロ基といった極性官能基の還元に有効な活性サイトが生成する可能性を提案している。このように、本年度において最適な複合クラスター触媒の構成元素種の発見、および複合化による触媒作用発現の起源の解明を解明した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に見出した最適な構成元素種に基づき、金属-金属酸化物複合クラスター触媒の開発を進める。この触媒は、予め金属部位と酸化物部位からなる複合クラスターを合成し、前駆体とすることで調製される予定である。
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