研究課題
本研究では、光ファイバ中で生じるブリルアン散乱の傾斜部分のある特定周波数でのパワー変化を抽出することで、長いファイバに沿った歪・温度・損失の分布を高速で測定する「傾斜利用ブリルアン光相関領域相関領域反射計(SA-BOCDR)」の性能向上に取り組んでいる。平成30年度まで、曲げ損失の影響の回避、偏波揺らぎの低減による安定性の向上、長距離での動作の実証など、実用化に向けた研究を行っていた。しかし、本システムの歪ダイナミックレンジが 0.2% 程度に制限されてしまうという大きな問題点が残っていた。また、従来のBOCDRで実証されていた偏波ビート長の分布測定が実証されていないことも課題であった。そこで、平成31年度(令和元年度)は、(1) 歪ダイナミックレンジの拡大、および、(2) 偏波ビート長の分布測定の実証、の2点に注力して研究を推進した。以下、両者の詳細を述べる。(1) BOCDRでは、一般に、散乱スペクトルに相関領域法特有の雑音成分(富士山型ノイズと呼ばれる)を含み、これがSA-BOCDRにおける歪ダイナミックレンジの制限要因となってしまう。そこで、まず、散乱スペクトルの形状をさまざまな空間分解能に対して精緻に取得し比較検討を行った。この結果を元に、SA-BOCDRにおいては空間分解能と歪ダイナミックレンジがトレードオフの関係にあることを明らかにした。続けて、この関係を活用し、背景雑音の一部成分を歪に依存させることにより、歪ダイナミックレンジを従来の約3倍まで拡大することに成功した。空間分解能の要求が厳しくない用途での有用性が大幅に改善された。(2) 大容量通信の品質を保つため、偏波ビート長の分布測定は重要な役割を果たす。そこで、SA-BOCDRでもこれを実証するとともに、その際の独自のメリット(高速動作や歪・温度測定モードとの容易なスイッチングなど)を明らかにした。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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