研究課題/領域番号 |
17J07259
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
永岡 章 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 太陽電池 / 半導体 / 化合物 / 単結晶 |
研究実績の概要 |
低コスト・高効率太陽電池達成のために、現在率先して解決すべき問題の一つである開放端電圧VOCの理論値とのギャップに注目し、固有点欠陥の少ない良質なCu2ZnSnS4 (CZTS)系単結晶を用いてバッファ層とのPN接合界面を調査することからアプローチを行い変換効率向上のための知見を収集し、最終的に世界初となるCZTS系単結晶太陽電池を創製することを目的としている。 本年度は、CZTS系単結晶/バッファ層とのPN接合形成を目標とした。N型バッファ層には、化合物太陽電池で用いられているCdS薄膜を70-90℃程度の低温で作製できるChemical bath deposition (CBD)法で単結晶上に成長させた。成長条件としては、金属塩CdCl2、硫化物チオウレア、錯化剤としてアンモニアを用いて成長温度80℃、成長時間11分で単結晶上にCdSを50 nm程度成膜した。CZTS単結晶/CdS薄膜サンプルのRamann分光測定を行い、CdSに起因するピークとCZTSに起因するピークをそれぞれ観察し、CZTS単結晶上にCdS薄膜が製膜できていることを確認した。PN接合界面と特性評価について電気容量-電圧 (CV)測定から空乏層幅と空乏層内のアクセプター濃度プロファイル、電流-電圧 (IV)測定からPN接合形成の証拠となるダイオード特性を評価した。IV特性から典型的なダイオード特性を観察し、PN接合が形成されていることを確認後、CV測定から空乏層中のアクセプター濃度プロファイルを算出し、現在20 %以上の高効率を達成しているCuInGsSe2太陽電池と同様の値であり、高効率が期待できる界面の一つの証拠となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題は順調に進展しており、本年度の研究計画である高品質CZTS 単結晶太陽電池デバイス作製のためのN型バッファ層とのPN接合形成も達成した。太陽電池でもっとも重要な発電層部分であるPN接合形成を確立した事により今後の更なる詳細な界面物性の調査へ進展する事が出来る。 本研究課題であるケステライト化合物バルク単結晶太陽電池デバイスの実現へ着実にステップアップしている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は更なる詳細な界面物性として、伝導帯のバンド不連続量をX線光電子分光法(XPS)から情報を収集し、最終的には太陽電池設計の指標となるバンドダイアグラムを作製する。ここでCZTS/CdSを基準とし、適したバンド不連続量であった場合はCdSをそのまま用いる。適切な値よりも小さい、負の値の場合は、伝導帯位置がCdSよりも高いZnSやIn2S3を適用する。逆に大きい場合は、伝導帯位置をCdSよりも低くする必要があるため、Zn(SxO1-x)混晶にすることによりZnSの伝導帯位置を制御することで適用する。これらのバッファ層は、CBD法を用いて製膜する。更に得られた界面については、来年度に電子線誘起電流 (EBIC)法を用いて空乏層の形状と詳細な幅の評価、透過型電子顕微鏡 (TEM)を用いてナノオーダーでの界面の均一性や平坦性、組成分析を行う計画である。得られた界面におけるバンド不連続量、バッファ層や界面付近の組成と電気的特性との関連性から単結晶太陽電池作製へ向けた最適なバッファ層の確立を目指す。
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