研究実績の概要 |
太陽電池開発において特に重要である低コスト・低毒素・高効率を達成し得る可能性を持つ新規材料である化合物半導体Cu2ZnSnS4 (CZTS)、Cu2ZnSnSe4 (CZTSe)、Cu2ZnSn(S, Se)4 (CZTSSe)は、世界中で太陽電池デバイス応用として活発に研究されており、注目度の高い材料である。現在CZTS太陽電池の変換効率向上の制限要因となっているのは、開放端電圧VOCが理論値(バンドギャップ値)の半分程度(VOC達成率42-50%)しか得られていない事である。他の化合物太陽電池のワールドレコードと比較すると、変換効率22.3%を達成しているCu(In, Ga)Se2 (CIGS)においてVOC達成率60-65%、21.5%を達成しているCdTe太陽電池においてVOC達成率60%であり、CZTS系は10%程度低い値となっているが、同じ課題を抱えている。VOCの制限要因としてキャリアの再結合によるもので、主に①光吸収層バルク内、②空乏層内、③PN接合界面、④裏面電極近傍の4つが挙げられる。特に光材料層自体の物性に依存する①から③の再結合を改善する必要があり、そのために本研究では結晶欠陥の少ない高品質CZTSバルク単結晶に注目し、単結晶を光吸収層に用いて変換効率向上に必要な界面欠陥の少ない良質なPN接合を実現する事で界面におけるキャリア再結合に関する知見を収集し、開放電圧の高い単結晶太陽電池デバイス作製を目的としている。
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