研究課題/領域番号 |
17J07303
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永島 臨 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 触媒開発 / タンパク質修飾 / 細胞内反応 / 創薬 |
研究実績の概要 |
深刻な社会問題の一つである「がん」に対し新規作用機序を持つ治療法としてヒストン脱アセチル化酵素を阻害し間接的に生体内アセチル化レベルを上げる低分子医薬が注目を浴びている。私はその異なるアプローチとして触媒による酵素代替的なヒストン選択的アセチル化反応を提案している。当研究室ではこれまでにin vitro系において細胞溶解液存在下ヒストンかつH2BK120残基選択的なアセチル化を行うLANA-DSH触媒システムを開発しているが、私はこれを基盤に、安定に細胞内に取り込まれ、かつ細胞内条件にて高い反応性を示す触媒システムの開発に取り組んでいる。
昨年度立てた研究計画として、DMAP-SHが細胞内条件において高い反応性を獲得できるよう、様々な塩基部位・リジン認識部位を導入した触媒合成を行うことを考えていた。本目標に向け効率的・収束的な複数の触媒合成を達成した。しかし予想に反して大きな活性の向上は見られなかった。その中で、種々の触媒を比較・評価することで、塩基部位の導入はDMAP-SHの活性向上に寄与しているものの、塩基部位の立体的な嵩高さによる阻害効果のほうが反応性の向上よりも大きいことを見出した。
また、DMAP-SHのベンジルチオール部位は血清中で不安定であることがわかっていたが、申請者は当該チオール基をイソプロピルジスルフィドにてプロドラッグ化することでこの問題が解決できることを見出した。イソプロピルジスルフィドは血清中で十分に安定であり、かつ生体内のグルタチオン濃度にてDMAP-SHを放出できる。ジスルフィド部位に膜透過性ペプチドであるオクタアルギニンを結合させた際には血清中で不安定になってしまったが、今後はD体や他の膜透過性ペプチドを結合させることで膜透過能を付与したDMAP-SHのプロドラッグ化に取り組みたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私は今年度、DMAP-SHが細胞内条件において高い反応性を獲得できるよう、様々な塩基部位・リジン認識部位を導入した触媒合成を行うことを考えていた。本目標に向け効率的・収束的な複数の触媒合成を達成した。しかし予想に反して大きな活性の向上は見られなかった。その中で、種々の触媒を比較・評価することで、塩基部位の導入はDMAP-SHの活性向上に寄与しているものの、塩基部位の立体的な嵩高さによる阻害効果のほうが反応性の向上よりも大きいことを見出した。また、DMAP-SHのベンジルチオール部位は血清中で不安定であることがわかっていたが、当該チオール基をイソプロピルジスルフィドにてプロドラッグ化することでこの問題が解決できることを見出した。イソプロピルジスルフィドは血清中で十分に安定であり、かつ生体内のグルタチオン濃度にてDMAP-SHを放出できる。
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今後の研究の推進方策 |
所属研究室では私が得た知見や合成法をもとに共同研究者がDMAP-SHを上回る高活性な触媒を開発している。そこで今後は細胞内反応に向けて解決すべき他の問題として、LANAペプチドの安定性を評価し、安定性に問題があれば先行研究に従い安定性の向上を目指す。安定性を向上させたLANAペプチドに対し蛍光色素を結合させ、細胞内に直接投与し、安定にクロマチンに局在するかを評価する。こうして安定性・反応性・局在性を改善させたLANA-DSHに対し細胞膜透過性ペプチドを細胞内条件にて切断される設計にて結合させることで細胞膜を透過し、クロマチンへ局在するか評価する。安定にクロマチンへ局在する設計が達成できれば、細胞内におけるヒストンのアシル化評価をウエスタンブロッティングやLC-MS/MSにて行う。
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