本研究の目的は哺乳類細胞においてミトコンドリア・ER間コンタクトを制御する因子を,遺伝学的スクリーニングにより同定することである。三年目の目標は,二年目でスクリーニングを行って同定したミトコンドリア・ER膜間コンタクトを制御する因子候補について、機能検証することである。 本年度では、スクリーニングにより同定されたオルガネラ膜間でのsplit GFPの再構成を阻害する遺伝子について一過性発現による局在解析とsiRNAを用いた機能解析を行った。 同定されていた遺伝子の中でも過去にコンタクトサイトへの寄与が報告されていない遺伝子について、まずミトコンドリアの形態への影響を調べた。siRNAによって発現を抑制した結果、これらの遺伝子のうちいくつかについてはミトコンドリアのチューブの長さを伸長させ、細胞内での分布などの形態に影響を与えた。これはER-ミトコンドリア間コンタクトがミトコンドリアの切断に関与することを考慮すると妥当な結果であると考えられた。 またERは細胞内でのカルシウムの貯蔵庫としての役割を果たしており、ER-ミトコンドリア間コンタクトはミトコンドリア内のカルシウム濃度の調節に大きな影響を与えていると考えられている。そこで今回同定されたER-ミトコンドリア間を調節する候補因子のsiRNAによる発現抑制のカルシウムシグナリングへの影響を、ミトコンドリア内カルシウム濃度を蛍光強度によって可視化するタンパク質を用いて定量した。 さらにこれら因子にFLAGもしくはGFPタグなどを付加したタンパク質を細胞内で過剰発現させ、抗体を用いた免疫染色法などで局在を検証した。これらの実験によりミトコンドリア・ER両オルガネラコンタクト部位に局在し,ミトコンドリア形態などに影響を与えた因子について相互作用相手を免疫沈降法などで探索している。
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