研究課題
(1)ペンタアザフェナレン(5AP)を含む共役系高分子の電子・磁性材料への応用本年度は2報の学術論文を学術誌に報告した。論文1では、4つの置換基を5AP骨格に導入することで戦略的に近赤外吸収色素を創出した。この結果は、5APの持つ分離した最高被占軌道(HOMO)・最低空軌道(LUMO)を活かした結果である。論文2では、5APを基盤とするホウ素錯体が発光性を示すことについて報告した。この発光性は、ホウ素原子の強い電子受容性によって、5AP由来のHOMO-LUMO遷移が変化することに由来している。これは、アミノペンタアザフェナレンにおける「禁制なHOMO-LUMO遷移の変化によって発光特性を獲得する」という分子設計を更に拡張するものである。その他、5APの単独重合体の合成に成功しその物性を評価した。この単独重合体の合成においては、酸化重合を利用した。酸化重合は反応の選択性に乏しいが、5APはHOMOが存在する位置としない位置が明確であるため、存在する位置でのみ反応が進行することが明らかとなった。以上のように、本最終年度での研究により、5APを基盤とするπ共役系について「分離したHOMO・LUMO」に由来する反応性・電子物性・光学特性が明確化された。(2)窒素・ホウ素含有新奇縮環構造と共役系高分子への展開過去2年度で様々な合成経路を検討したが当初予定していた分子の合成は極めて困難であった。そこで、5APでの知見を他の共役系に活かすという観点から分子構造を再検討した。その結果、分子軌道に着目した設計を行えば、典型的なアクセプター分子であるピラジンのLUMOのみを選択的に下げることができることを着想した。実際にこの発想に基づいて分子を合成し、近赤外発光ホウ素錯体の創出に成功した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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