研究課題/領域番号 |
17J07579
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安井 良輔 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 中層大気 / 重力波 / ロスビー波 / 潮汐波 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、全大気シミュレーションモデルGAIAを用いて、ロスビー波と重力波の発生要因の研究を行なった。その成果は、ロスビー波、重力波と潮汐波を含めた大気波動の運動量収支とロスビー波の順圧・傾圧不安定からの発生とその順圧・傾圧不安定の発生要因に関する論文と中間圏および下部熱圏における重力波のシア不安定からの発生とそのシア不安定の発生要因に関する論文の2編にまとめ、国際論文誌Journal of the Atmospheric Sciences に投稿した。査読結果は条件付き受理であった。現在、改訂稿の投稿を済ませ査読者のコメント待ちの段階である。また、日本気象学会春季大会と極域科学シンポジウムにおいて口頭発表を行なった。さらに、中間圏および下部熱圏における大気微量成分の大気波動や気候場への影響を調べるため、二酸化炭素と一酸化炭素に関わる光化学反応コードを開発し、GAIAモデルに導入した。計算で得られた二酸化炭素の解離反応速度の鉛直分布は、他の全大気モデルの結果と調和的であること、また、光化学反応・輸送を考慮しない時に比べて、二酸化炭素濃度が夏極で低く、冬極で高いことを確認した。今後、このモデルを用いて、二酸化炭素濃度変化が及ぼす下部熱圏の潮汐波の振幅への影響など、これまであまり注目されてこなかったが重要だと考えられる新たな視点に基づく研究を進める計画である。また、二酸化炭素に次いで大きな放射冷却の効果を持つオゾンや水分子もモデルに組み込み、その影響を定量的に評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、その前年度から引き続き全大気シミュレーションモデルGAIAを用いて、ロスビー波と重力波の発生要因の研究を行なった。特に潮汐波の位相に合わせてシア不安定の発生頻度が変調されることをわかりやすく示した。この研究については、ロスビー波、重力波と潮汐波を含めた大気波動の運動量収支とロスビー波の順圧・傾圧不安定からの発生とその順圧・傾圧不安定の発生要因について扱った論文と中間圏および下部熱圏における重力波のシア不安定からの発生とそのシア不安定の発生要因を調べた論文にまとめた。2つの論文とも国際論文誌Journal of the Atmospheric Sciences に投稿し、条件付き受理であった。現在、改訂した論文を投稿した段階である。これらの内容について、平成29年度に、日本気象学会春季大会で潮汐波に伴うシア不安定の発生を、極域科学シンポジウムにおいて重力波の発生についてまとめた発表を行なった。 平成29年度には、もう一つ研究を行なった。中間圏および下部熱圏における大気微量成分の大気波動や気候場への影響を調べることである。前述の研究同様、電離大気の影響も含めて解析を行なうため、全大気モデルのGAIAを用いた。まず、二酸化炭素の光化学反応と輸送をGAIAモデルに導入した。二酸化炭素濃度の初期値はSABERで観測された全球平均のものを、一酸化炭素濃度の初期値はACE-FTSで観測された全球平均のものを用いた。初期値の二酸化炭素濃度の分布で得られた二酸化炭素の解離反応速度は、他の全大気モデルでシミュレーションされたものと同様の結果になることを確認した。さらに10日間の計算を行ない、日の当たる夏極中間圏界面付近で二酸化炭素濃度が二酸化炭素の輸送のみをシミュレーションした結果に比べて増加、一方日の当たらない冬極中間圏界面付近で減少していることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、高度120km以上で二酸化炭素の解離反応で卓越すると考えられている酸素原子イオンと二酸化炭素の反応は、GAIAの電離圏モデル部分から導入しようと改良しているところである。また、二酸化炭素濃度の変化による下部熱圏における潮汐波の振幅の変化等を解析しようとしている。さらに、中間圏および下部熱圏でのオゾン反応をGAIAモデルでシミュレーションするために、過去研究の調査を行なっているところである。 今後は、中間圏および下部熱圏のオゾン反応を含めたシミュレーションを行ない、大気微量成分による大気波動の振幅の変化などの影響を調べる予定である。
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