核燃料の核分裂生成核種の中には半減期が極めて長いものが存在し、それらの適切な処理処分方法の開発は重要な課題である。特に福島第一原発での汚染水処理においても問題となっている129I、79Seは、核分裂生成核種の中でも半減期が特に長く(129I 1.6x107年、79Se 6.5x104 年)、かつ水溶液中からの除去が困難な陰イオンとして存在する。平成29年度は、バライトの沈殿過程におけるIO3-、SeO32-、SeO42-の挙動を室内のシミュレーション実験により詳細に調べ、分配係数、格子定数、局所構造などの鉱物学的な解析を行った。これらの結果を基に、バライトによるこれら陰イオンの取り込みの可能性を検討するとともに、様々な条件下での合成実験を行い、取り込みに最適な条件を見出した。 分析の結果、SeO32-の場合は、結晶構造に歪みを与えるCa2+の濃度が高く、競合イオンの硫酸イオン濃度が低く、かつ結晶表面での錯生成がしやすい高pHほど、バライトに分配しやすいことが分かった。また、SeO42-の場合は、競合イオンであるSO42-の濃度調整のみが、IO3-の場合はSO42-と過飽和度の調整が重要なことが分かった。以上の結果を考慮し、最適な条件でバライトとIO3-、SeO32-、SeO42-の共沈実験を行ったところ、SeO32-の分配係数は、初期の条件に対して約260倍の4100L/kg、SeO42-の場合は約790倍の3500L/kgになり、IO3-は約390倍の7900L/kgとなり、水溶液中の80%以上の(初期濃度: 1 mg/L)がバライトの構造内に取り込まれた。これら得られた除去効率の値は先行研究で用いられている鉱物よりも高く、バライトの難溶性の性質と相まって、放射性の陰イオン核種を長期間保持する性能を持つと予想され、より効果的な処理・処分が可能となる。
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