研究課題
前度に作成したニホンノウサギのドラフトゲノムを参照配列に、白化型と非白化型が混生する集団を対象として、毛色の違いに相関を示すゲノム領域の探索を行った。その結果、毛色関連遺伝子として知られる遺伝子Aで冬季毛色二型との強い相関関係が観察された。そのため、遺伝子A上のSNPをターゲットとしたPCRプライマーを作成し、動物園の飼育繁殖個体での冬季毛色と遺伝子Aの遺伝子型との対応を確認した。20個体について遺伝子Aの解読を行ったところ、非白化型は必ずpアレルをホモかヘテロで持ち、白化型はqアレルをホモで持つことが確かめられた。また、その他の個体を含めた全56個体の家系図からも、非白化型が白化型に対して優性であることも確認された。続いて、日本列島における冬季毛色二型の分布状況を把握するため、およそ300個体の野生個体(糞サンプルを含む)について遺伝子Aの解読を行い、毛色の判定を行った。その結果、白化型と非白化型の分布は、列島内の積雪量の分布によく類似しており、冬季の毛色が地域の積雪環境により自然選択を受けていることが分布パタンからも示唆された。さらに、遺伝子Aの多型に基づくネットワーク解析を行ったところ、白化型と非白化型はそれぞれ異なるクラスターに分かれ、列島内で平衡選択を受けていることが示唆された。また、白化型は長期安定した分布をしているが、非白化型は近年に一斉放散を経験していることも示唆された。このことから、ニホンノウサギの毛色二型は氷期/間氷期の気候変動および地域による積雪量の違いといった時空間的な適応度の変動によって平衡選択が働き、種内に二型が長年維持されてきたと推察される。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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