研究課題/領域番号 |
17J07674
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
分寺 杏介 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 反応時間 / Diffusion model / LBA |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多様な評定者効果を統一的に表現する数理モデルを提案し、その性能を評価すること、また提案モデルを使用した実際の分析例を提示することである。 本年度は、Linear Ballistic Accumulationモデル(LBA)に基づく項目反応モデルについての考察を中心に行った。モデルの構築にあたり,追加の情報を用いることを考える上で、最もコストを抑えて得ることができる情報として(CBT形式の場合は)反応時間を使用することが考えられる。LBAは反応時間と項目反応を同時に分析対象とすることが可能なモデルの代表の一つであるが、このモデルは通常項目側のみのパラメータを持つものであるため、このままでは評定者効果をパラメータとして組み込むことが難しい。一方で、LBA同様に反応時間と項目反応を同時に分析対象とすることが可能なモデルとしてDiffusionモデル(DM)がある。DMは先行研究で項目反応理論への拡張が提案されているものの、多肢選択への応用が難しい。本年度の研究では先行研究の考え方を応用し、LBAをDMと同様の形で項目反応理論の枠組みに組み込むモデルを提案した。DMを項目反応理論に拡張した先行研究では、各パラメータ(drift rate及びboundary)のそれぞれを評定者及び項目の項に分解して組み込んでいる。そこで、同様のパラメータ設定をLBAにて表現した上で、このモデルと従来のDMモデルを比較した結果、推定値は従来モデルと非常に高い相関を示した一方で、推定までの収束回数(MCMCアルゴリズムによる)も従来モデルより少なく抑えられることが明らかとなった。これにより、項目反応と反応時間を同時に利用する多肢選択モデルのパラメータとして評定者効果を表現することが可能となる。本研究の成果の一部を国内学会及び国際学会で発表し、またこの発表に基づいた論文が現在査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は,様々な分野における意思決定モデルのレビューを行い,評定者効果を統一的に表現するモデルの構築を行う予定であった。これについて,反応時間を用いて評定者効果の一部を表現し,かつ多肢選択に適用することができるモデルの基礎を提案した論文が現在査読中である。 しかし,多様な評定者効果の多くをモデルに組み込むことはできておらず,またモデルの実証研究を行うための大規模データの整備を十分に進めることができていないことから,現在までに進捗としてはやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
Linear Ballistic Accumulationについて,各選択肢の指向が他選択肢の影響を受けて変化するモデルについてすでに関連研究が出てきているため,今後は現在まだ組み込むことができていない「評定の順序」等に関係するものを中心にモデル式における表現方法を考案していく予定である。 同時に,モデルが複雑になることで推定にかかる時間が増大することが予想されるため,これを解決する手段として変分ベイズなどの簡便な方法について理論的検討を行い適用可能性を探ることが必要である。 加えて,提案モデルの性能を評価するための実証研究のデータ整備のために,オンライン実験を予定しており,こちらのフレームワークも作成する予定である。
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