研究課題/領域番号 |
17J07694
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大久保 健一 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | カオス / Lyapunov指数 / 不変測度 / Exact性 / Anosov性 / SRB測度 / 超拡散 / コーシー分布 |
研究実績の概要 |
カオス現象は天体運動、核融合プラズマ、非平衡定常系など広い分野で観測、研究されている。カオスの研究では数値計算が主体となることが多い。それはカオスの性質上、理論計算が困難であることが原因である。本研究では理論計算を行うために、不変密度関数がわかっているカオス写像を用いた。 今年度の研究実績は具体的に以下の2点で構成される。 1)超一般化Boole変換と呼ばれるカオス写像を用いて、カオス性の定義に関わるLyapunov指数という量を解析的に導出することに成功した。一般的にLyapunov指数が正の場合、軌道はカオス的とみなされる。しかしLyapunov指数を力学系のパラメータについて陽に導出することは簡単ではない。本研究では超一般化Boole変換のexact性を証明することで、パラメータの関数として導出した。パラメータを調整することでLyapunov指数を正からゼロに連続的に変化させることができるが、Lyapunov指数がゼロとなる臨界点での臨界指数を可算無限個の写像について導出することに成功した。この結果を応用数理学会2017年度年会等で発表し、論文にまとめ投稿した。 2)tangent関数を用いた4次元symplectic写像が、あるパラメータの範囲でAnosov性を持つことを証明した。それに伴い一様分布がSRB分布となることを示した。このことから、4次元シンプレクティック写像がAnosov性を持つ際、運動量に関してはほとんどすべての初期点で超拡散が発生することを理論的に示し、数値計算で確認した。 この結果をXXXVII Dynamics Days Europe in Szeged等で発表し、論文にまとめ投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に書かれた1-a)に関しては概ね達成できた。 1-b)については、本年度で基礎的考察に時間をかけたため未達成な部分があるが、本年度で証明した内容によって来年度の研究計画をスムーズに進めるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
超一般化Boole変換については、無限エルゴード性の観点から研究を進める。また、N体系への拡張を考える。 tangent関数を用いたsymplectic写像に関しては、N体系への拡張、量子系での超拡散について研究を行う。symplectic写像の研究については理論と数値計算の両方を行う予定である。理論の進展速度によっては数値計算を先に行う。
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