本年度はこれまで進めてきたCOMET実験に用いる円筒型ドリフトチェンバー(CDC)の性能評価試験の最終段階に到達した。まず昨年度導入した保護抵抗を実装済みのケーブル基板を全領域分用意し、全てのセンスワイヤーへの配線を完了した。トリガー回路やデータ収集システムの構築に際しては、昨年度確立させた基盤システムを拡張し、全4986チャンネルの読出し回路からのデータ収集を成功させた。オンラインイベントビルディングとサプレスモードを導入することでデータ量の削減にも寄与した。このように本年度ついにCDCの全領域の運転にこぎつけたことで本研究の重要な目標を達成した。 また、CDCのセットアップを開発のためのテストベンチとして提供するなど、多様なサブグループとの協奏の場を産みだし、国内外の共同研究者と協力しつつプロジェクトを主導してきた。解析においても本年度からは中国グループと協力し、COMET実験の公式フレームワークに基づいた新たなプラグラムを整備するなどソフトウェア開発にも注力してきた。これにより本実験を見据えたCDCのキャリブレーション手法の構築に寄与する。このようにハードウェア・ソフトウェア両面においてCDCの完全運転を実現したことは本研究における大きな成果である。 今年度は国際会議でCDCの開発とCOMET実験について3件の発表をおこなっており、国際的な場での成果発信も強く意識している。 本研究により来るべきCOMET実験第1期の物理測定における主要検出器であるCDCを完成させることができた。これによりCOMET実験の開始に向けて大きく前進した。
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