本研究課題の目的は地域在住高齢者を対象とした縦断追跡の観察研究(柏スタディ)から、次の3点を明らかにすることである。[1]フレイル(虚弱)新規発症や回復に影響する要因の同定、[2]フレイルのリスク保持者を簡便にスクリーニングする方法の開発、[3]地域での簡易介入プログラム「市民フレイルサポーターによるフレイルチェック」の有効性の検証である。これらの研究目的を達成することにより、多面的なフレイルのエビデンス構築や地域でのフレイル予防法・健康増進運動論の確立を目指した。 結論として、(1)フレイル対策ではオーラルフレイルやソーシャルフレイルを含めた多面的なフレイルに対するアプローチが重要であることを見出した。本研究で得られた要素は、フレイルサイクルの加速因子となり得ることから、然るべき介入や支援を施すことでフレイル予防・改善に寄与することが期待できる。さらに、(2)日常生活の中では気が付きにくい骨格筋量の減少やサルコペニアに対して「指輪っかテスト」や「家庭用体組成計」を用いることで人や場所を選ばずに簡易スクリーニングや定期的なチェックを可能とした。少子高齢化社会によりケアが必要な高齢者の絶対数の増加と医療・介護を担う人的資源が枯渇していく中で、社会性も含めた多面的なフレイルへの対策にいかに実現可能性をもたせるかが重要である。よって、本研究で明らかにした多面的なフレイル対策を、当事者である地域市民がいかに主体性をもって、産業、大学、行政等と連携しながら共に講じることができるかが重要である。 最後に、(3) 住民主体のフレイルチェック活動のデータが全国から収集され、リピーター参加者の意識変容や行動変容に資する可能性を確認するまでに至っている。
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