| 研究課題/領域番号 |
17J07841
|
|---|
| 研究機関 | 東京農工大学 |
|---|
研究代表者 |
長沼 知子 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
| キーワード | 安定同位体比分析 / 大型哺乳類 / 食性 / 雑食性動物 / ツキノワグマ |
|---|
| 研究実績の概要 |
本研究では、ツキノワグマの食性を個体レベルで解明し、性・齢、血縁関係、食物資源および種間関係が食性に及ぼす影響を複合的に評価することで、大型哺乳類における個体間の食性のバリエーションに対する学習の影響を明らかにすることを目的とした。具体的には、クマの体毛の安定同位体比分析および糞内容物分析から得られた食性データと個体の属性情報（性・齢、血縁関係）を基に、年齢に伴う経験的学習および母親から子への伝播に伴う社会的学習が、大型哺乳類の食性のバリエーションに与える影響を体系的に明らかにすることを目指している。
2017度は、栃木県足尾日光山地にて、クマの学術捕獲を行い、捕獲個体の体毛の採取とGPS首輪の装着を行ったほか、東京都奥多摩地域と岩手県のクマの体毛のサンプリングを行った。栃木県でのGPS首輪装着個体の追跡踏査については、冬眠前まで行い、利用場所での糞の採取や食痕の記録を行った。また、ロシア・シホテアリン地域では現地でのクマの採食物、および過去に捕獲されたクマの体毛のサンプリングを行った。
栃木県および東京都の個体については、すべて安定同位体比分析が終わった。その結果、初夏から夏にかけての動物資源（二ホンジカなど）の利用が、個体により大きく異なっていることが示唆された。また、シカの個体数変動とクマの食性の変化には関係がある可能性が示された。得られた研究成果については、国際クマ学会および日本哺乳類学会で発表を行ったほか、現在、国際誌に1本の論文を投稿中である。次年度は、ロシアと岩手の個体の安定同位体比分析を進めるとともに、採食物の学習の影響について解析を進めていく予定である。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は栃木県と東京都でのクマの体毛の採取、ロシア・シホテアリン地域でのクマの体毛と採食物のサンプリングを行った。また、予定より早く岩手県のクマの体毛のサンプリングも行うことができた。研究成果に関しては、国際クマ学会および日本哺乳類学会で発表を行ったほか、現在、論文を国際誌に投稿中である。
|
| 今後の研究の推進方策 |
学習による食性のバリエーションに対する影響について、GPS首輪による位置情報や糞内容物分析の結果と組み合わせて解析する予定である。さらに2018年度は、クマの食性に影響を与えると考えられる、シカの個体数の少ない岩手県の個体の体毛の安定同位体比分析を行うことで、クマの食性に対するシカの影響を検証する。また、ロシアの個体の体毛と採食物も同様に分析し、ヒグマとツキノワグマの食性解析を行う予定である。
研究成果は、国内学会で発表を行うとともに、成果の地元への還元を目的に、現地で開催される研究交流会にも参加する予定である。
|
